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是枝監督作『怪物』だけじゃない! 「観るべき」カンヌ国際映画祭2023

©2023「怪物」製作委員会

今年も5月16日から27日にかけて、第76回カンヌ国際映画祭が行われた。ベネチア、ベルリンと並ぶ世界的な知名度と規模を誇る映画祭の一つで、これらは総じて世界三大映画祭と呼ばれている。

カンヌ国際映画祭は三大映画祭の中で、もっとも商業性が高く、毎年多くの出品があるだけでなく、映画祭開催期間中のカンヌでは、作品の配給権交渉や今後の企画を発表するプレゼンテーション、まだ編集段階の映画のプロモーションなどが行われ、その年の映画作品の動向を示す場となっている。

公式出品された映画が、最高賞である「パルムドール」を競い合う「コンペティション部門」では、毎年多くの映画監督の意欲作が並ぶ。最高賞に続き、グランプリ(審査員特別賞)、最優秀監督賞、審査員賞、脚本賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞が選ばれる。他に新人監督を対象とした「ある視点部門」が注目されることが多いが、これらの公式選出の部門以外にも、独立選出と呼ばれる多様な部門がある。

審査は部門ごとに審査員団が設けられる。映画監督や俳優から5〜10名で構成されたメンバーが各部門の優秀作品や優秀者を選定する。映画監督や俳優らが選ぶ作品ということで、商業性の高さと同時に、映画作品に表れる監督の作家性に関心が寄せられ、エンターテインメントとしての映画の醍醐味や娯楽性以上に、監督が表現したい世界観や物語、観客に伝えたいテーマなどが重視される傾向にある。

カンヌを愛し、カンヌに愛される是枝裕和監督作品

怪物
©2023「怪物」製作委員会

今年も日本から是枝裕和監督が新作となる『怪物』(公開中)を出品した。すでに報じられているように、本作品はコンペティション部門の脚本賞と独立賞である「クィア・パルム」の二つを受賞している。

日本ではすでに公開されており、作品のあらすじやレビュー、鑑賞した人々の感想などが多数見られるが、この作品を観るなら、どうか余計な事前情報に触れることなく観てほしい。

最近では物語の結末や要点を把握した上で鑑賞したい、と考える人も居る。そのこと自体を否定するものではないが、本作については、黒沢明監督の「羅生門」を作品構成の比較対象として挙げた紹介も散見される。しかし、物語の展開が大きく鑑賞後の感情や感想に影響を与えると考えられるため、あまり「オチ」を気にせず、映画の世界に触れたい。

怪物
©2023「怪物」製作委員会

今回のカンヌでは、坂元裕二のシナリオが脚本賞を受賞している。是枝裕和監督は自ら作品の脚本も書く場合が多いが、本作では坂元裕二に脚本を依頼した意図を考えるのも興味深い。そして、「誰も知らない」を鑑賞したときにも感じたのだが、是枝裕和監督は子役を魅力的に演出することに優れていると思う。本作で物語の主軸となる小学5年生の少年が2人登場するのだが、非常に瑞々しく(みずみずしく)繊細でありながら、力強く生命力に満ちた表情をみごとに切り取って見せてくれる。

映画館で鑑賞することが難しければ、今なら配信プラットフォームも多数あるので、映画という物語の表現方法を通じて、是枝裕和監督のメッセージをぜひ受け取ってほしい。

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