是枝監督作『怪物』だけじゃない！　「観るべき」カンヌ国際映画祭2023

日本を代表する名優が魅する、平凡な日々の物語

もう一作、今回のカンヌ国際映画祭で話題となった日本に関連する作品が、ヴィム・ベンダース監督作の『PERFECT DAYS（原題）』（日本公開日未定）。本作の主演は役所広司が務め、男優賞を受賞したことで話題の作品だ。

本作は東京・渋谷でトイレ清掃員として働く、役所広司演じる平山の日常を描いた長編作品だ。少々突飛な設定に思える本作だが、物語の背景にはベンダース監督自身が日本の公共トイレに感銘を受けた経験があるそうだ。清掃員である平山の淡々と繰り返される日常と、そんな日々の中に見いだす小さな変化や新鮮な歓びを描いた作品だ。

東京・渋谷に実在する公共トイレとは、東京オリンピックを機に世界的知名度を持つ建築家、クリエイターらが立ち上げた「THE TOKYO TOILET」プロジェクトによってリデザインされた公共トイレのことだ。この新しい形態、コンセプトをもった公共施設が、もう一つの主役であり、ヴィム・ベンダースが監督を務めることに興味が湧く点にもなっている。

親日家でもあり、多くの作品を世に送り出してきたヴィム・ベンダースが役所広司や個性的な日本の俳優陣を通じて、どのような物語を描いているのか、日本公開が待ち遠しい。