是枝監督作『怪物』だけじゃない! 「観るべき」カンヌ国際映画祭2023
2023.6.8
2023.6.8
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今回のカンヌ国際映画祭最高賞であるパルムドールは、ジュスティーヌ・トリエ監督の『Anatomy of a Fall(英題)』が受賞した。不審死を遂げた夫の殺害疑惑を持たれた妻の裁判の様子を中心に描かれるスリラー作だ。単なる法廷スリラーではなく、裁判の様子を軸に夫婦の関係や家族の在り方など、人間関係に切り込んだ作品となっている。
また、日本では村上春樹の小説「ノルウェイの森」を映画化したことでも知られる、トラン・アン・ユン監督の『The Pot-au-Feu(英題)』が監督賞を受賞している。主演はジュリエット・ビノシュが務める。タイトルである「ポトフ」からもわかるように、料理をテーマとした物語で、19世紀を舞台とした、ユン監督の美しい映像美を楽しめる作品となっていそうだ。
審査員賞を受賞したフィンランドの、アキ・カウリスマキ監督の『Fallen Leaves(英題)』も興味深い作品だ。フィンランドの労働者階級の人々をテーマに取り上げることが多いカウリスマキ監督の作品は、過酷で冷たい現実を受け入れた人々の生活を、独特のユーモアで描いたものが多かったが、本受賞作はコメディタッチの作品となっており、カウリスマキ監督の新しい一面が観られるだろう。
そして、出品作品の中でもう一作楽しみなのが、日本でも人気の高いウェス・アンダーソン監督の新作『アステロイド・シティ』 (9月1日公開)だ。エイドリアン・ブロディやエドワード・ノートンといったこれまでのアンダーソン監督作の常連に加え、スカーレット・ヨハンソンやトム・ハンクスも出演している。1950年代、アメリカの架空の砂漠の町、アステロイド・シティで行われる天体観測大会を舞台に、人々が「世界を変える出来事」に遭遇する。ポップな色彩と独自の画面構成で魅了する世界観は健在のようだ。
受賞各作品の日本での公開情報も順次発表されているようだが、カンヌ国際映画祭のテーマでもある監督の「作家性」に富んだこれらの作品を、ぜひ観てほしい。カンヌに選ばれる作品には、エンターテインメントとは異なる、観るものを揺さぶる力があると思うのだ。
text: Ryoko Morita
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『怪物』
全国公開中
https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
『アステロイド・シティ』
9月1日(金)公開(予定)
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