葉山に移住し、仕事も暮らしも心地よく。スタイリスト宇藤えみさんのライフシフト

そんな先人たちの話を聞く連載「ネクストステージ」。第8回は、スタイリストの宇藤えみさんにフォーカス。小学1年生の男の子と1歳の女の子、2人の子供を育てながら、昨年転居した神奈川県葉山町の自宅を拠点に、丁寧な食や暮らしを発信する宇藤さん。長年暮らした東京から葉山に転居したきっかけや暮らしの変化について、自身のこだわりが詰まった新居で話を伺った。

出産を機に、ファッションから“暮らし”にまつわる仕事にシフト

35歳で第1子を出産するまで、スタイリストとして仕事中心の忙しい生活を送ってきた宇藤さん。24歳でスタイリストとして独立してから35歳で出産するまで、主にティーン誌のファッション企画を手がけてきたのだそう。

「徹夜で着回しのスタイリングを100体組んで、そのまま撮影へ。若い頃はそんな生活も楽しんでいたのですが、1人目を出産した後、今までの働き方に復帰する想像がつかなくて……。ちょうどその頃、一緒にファッションの仕事をしてきた編集の方たちが結婚、出産を経てフードやインテリアの担当に異動するタイミングで、食まわりのスタイリングの仕事をいただくように。当初は料理家さんのテーブルスタイリングが多かったのですが、次第に料理も作らせていただく仕事が増えていきました。昔から料理も器も好きだったので、好きなこと、得意なことに自然と仕事がシフトしていった感じです」

独身時代から料理や器の収集が趣味で、自宅での素敵なおもてなしの様子をSNSで発信していた宇藤さん。出産後の住まいは緑豊かな都内の戸建てで、センスの良いインテリアやこだわりのキッチンで作る家族の食事の投稿は反響を呼び、雑誌の取材などが舞い込むように。折しもSNS経由での仕事のオファーが増えはじめた頃で、これまでの投稿が、新しい仕事へと繋がっていった。

「出産を機にファッションを諦めたんですか？と聞かれることもあるのですが、決してそういうわけでなく、息子が生まれてライフスタイルが変化したタイミングで、自然に好きなジャンルへと繋がっていったような感覚です。もちろんファッションは好きなのですが、流行を追うよりも、好きなものを長く大切にしたいタイプ。そういう意味で“暮らし”にまつわるスタイリングは向いていると思いますし、すごく楽しい」

自然豊かな環境で子供たちを育てたい。コロナ禍をきっかけに「いつか」を実現

自身の出身は愛媛県、夫の出身は福島県と、夫婦ともに自然豊かな地で育ったこともあり、結婚した当初から「いつかは自然豊かな地でのんびりと子供を育てたい」という思いを抱いていたという。とはいえ、宇藤さんはスタイリスト、夫は地方出張が多い仕事柄、なかなか都内を離れる決心がつかなかったのだそう。

「夫はマンション派、私は戸建て派だったのですが、ちょうど素敵な戸建てが賃貸で見つかったので試しに住んでみた後にコロナが始まって……。広いウッドテラスがあったり近所に大きな公園があったりと住環境が良かったので、小さな息子とのステイホームも救われました。結果、夫も戸建て派に。そのうち家族がもう1人増えることになり、息子が小学校に入学する前に自分達の家を作ろうと物件を探し始めたのですが、都内は自然が少なく予算も厳しい。そんな時、友人から葉山の方に空き物件があるけれど見に行く？と声をかけてもらったんです」

当初から葉山移住を計画していたわけではなかったものの、海と山に囲まれた環境をすっかり気に入った宇藤さん夫妻。最終的に購入した物件は、海岸から細い坂道を上った高台にある築30年ほどの中古の戸建て。リビングの正面からは海と富士山を見渡せる絶好のロケーションだ。

「ベビーカーを押しながら急な坂道を上るのは大変ですが、それでもこの見晴らしには変え難い。葉山は高速道路を使えば都内に出やすく、羽田空港へのアクセスも良いので地方出張が多い夫にとっても許容範囲。朝早く起きて海で遊んだり、近所を散歩したりと、子供たちと向き合う時間も増えました」

現在は自宅を拠点に、料理やテーブルスタイリングの撮影が多く、都内に出向くのは週に1、2回程度。仕事の内容によっては週に4 、5回都内に通うこともあるが、オンとオフの切り替えがしやすく、子育てを中心に考えられる今の暮らしが心地よいのだそう。

「都内に住んでいた頃は、まわりにバリバリ働いている方がたくさんいるので、自分も何かやらなくちゃと焦ってしまうことも。今はなんでもかんでも引き受けるのではなく、自分に合うお仕事を大切にしたい。選んでいるわけではないのですが、ありがたいことに、引っ越してからそういうお仕事をいただく機会が増えました」

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