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7月から10月にかけて、東京・渋谷で現代映画としてのジョン・フォード作品を発見する【what to do】

ジョン・フォード関連の上映会パンフレットや雑誌類。ぼけてしまっているが、左端が今回の上映会のチラシ。パート1の上映作品の写真と短い口上の入った保存版!(撮影・高橋直彦)

知的好奇心あふれる『マリ・クレール』フォロワーのためのインヴィテーション。それが”what to do”。今回はジョン・フォード(1895~1973)。「西部劇特有のマチスモや埃っぽさ、それに愛国趣味も苦手で……」という人にこそ観てほしいレトロスペクティブが7月23日から、東京のシネマヴェーラ渋谷で始まる。題して「二十一世紀のジョン・フォード」。上映作品を選んだのは『ジョン・フォード論』(文藝春秋)を出版したばかりの蓮實重彦さん。公開機会の少ない無声映画なども数多く上映されるが、懐古趣味ではなく、あくまで現代の映画として観客の感性を揺さぶる作品ばかり。この夏だけはヴァカンスなどと言わず、綿密な計画を立て、体調を万全に管理しながら上映館の暗闇に身を投じてほしい。多彩なフォード作品の再発見を通して、「映画を観る」ことに対する新しい地平が開けるはずだ。

遺作となった『荒野の女たち』が公開された1966年(日本ではなぜかその前年に公開されたらしい)には幼児だったため、残念ながら、フォード作品を同時代的に観ることが適わなかった。まとめて観ることができたのが83年の夏。当時、教養課程の大学生で時間だけはたっぷりあったので、東京国立近代美術館フィルムセンターで開かれた「ジョン・フォード監督特集〈1917~1946〉」に通った。もっとも、当時は映画史的な知識も覚束なく、「古典的な西部劇の巨匠」ということで漫然と観ていて、大切なショットを見落としていたり忘れたりしていたことに後から気づき、何度か見直した作品もある。

日本でフォードを観る環境は整ってきたか?

『血涙の志士』(28)
『静かなる男』(52)

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生誕100年の95年にも回顧上映が開かれ、『四人の息子』(28)や『血涙の志士』(28)といった無声映画が特集され、実際に観ているらしく手許には当時のパンフレットも残っているのだが、情けないことに記憶がまったくない。その後、DVDなどで手軽に見直すこともできるようになり、気が向いたときに作品な必要箇所をつまみ食いして観る悪い癖も付いた(まあ、そこから続けて最後まで観てしまうことも度々なのだけれど……)。

『若き日のリンカーン』(39)
『モガンボ』(53)

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Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。ジョン・フォードの映画を観なくても、もちろん充実した人生を送ることはできる。ただ、好機をスルーするのがもったいない。内藤さんが「若い人に観てほしい」と言っているのも、そんな思いがあるのではないか。今流行の「スキル」やら「キャリア」とやらの蓄積とは無縁だが、フォード体験がいい意味できっと何かを変えてくれるはず。個人的には「女性に観てほしい」。特に『マリ・クレール』フォロワーのような美意識に敏感な女性たちが渋谷に駆け付けて上映会を盛り上げられたら、何と痛快なことだろう!

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