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7月から10月にかけて、東京・渋谷で現代映画としてのジョン・フォード作品を発見する【what to do】

計43作品を通してフォードの多彩な魅力を識る

上映会は、パート1(7月23日~8月19日)とパート2(9月10日~10月7日)に分かれ、計43作品を上映。DVD化されている作品もあるが、ここでは大画面のスクリーンに投射される動画を不特定多数の人と見つめる、映画というメディアの即物的な魅力を堪能してほしい。パート1では、『香も高きケンタッキー(MoMA修復版)』(25)と『荒野の女たち』を特にお見逃しなきよう。両作はどういう訳だかDVD化されておらず、されていたとしても不完全なヴァージョンのものが流通していることもあって、今回はできるかぎり公開当時の形式に近いものが上映される。『荒野の女たち』の画質は「よくない」とのことだが、現状、日本で上映できるヴァージョンで最良のものではないか。この機会を逃すとしばらく観ることができないかもしれないので、眼にしっかりと焼き付けておきたい。

『香も高きケンタッキー』(25)ⓒParc Circus/Disney
『荒野の女たち』(66)ⓒParc Circus/Warner

3年前から、あらゆる手を尽くしてこの上映会を準備してきたシネマヴェーラ渋谷代表の内藤由美子さんは「フォード作品を観たことのない若い人たちに観てほしい」と話す。上映会のタイトルに「二十一世紀」と謳っているように、現代の映画としてフォードの作品を再発見してほしいという思いもあるのだろう。実際、100年以上前に公開された作品も上映されるが、今観ても全く古びない。

フォードの充実した上映会が東京で開かれる僥倖

「若い人たち」はともかく、会社勤めだと、なかなかまとまった時間を取るのが難しいが、そこは「夏季休暇」という手段を行使する方法もある。自分はそうするつもり。フェミニンなフォロワーにも是非、渋谷に駆け付けてもらいたい。「マッチョな西部劇」と思っていたら、大間違い。正直言って、そんじょそこらの凡作が束になっても適わない傑作ぞろいなのだ。素晴らしい批評に裏打ちされたジョン・フォードの充実した上映会が、世界のどこでもなく東京で開催される僥倖をシネマヴェーラ渋谷の暗闇でしみじみとかみしめたい。

Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。ジョン・フォードの映画を観なくても、もちろん充実した人生を送ることはできる。ただ、好機をスルーするのがもったいない。内藤さんが「若い人に観てほしい」と言っているのも、そんな思いがあるのではないか。今流行の「スキル」やら「キャリア」とやらの蓄積とは無縁だが、フォード体験がいい意味できっと何かを変えてくれるはず。個人的には「女性に観てほしい」。特に『マリ・クレール』フォロワーのような美意識に敏感な女性たちが渋谷に駆け付けて上映会を盛り上げられたら、何と痛快なことだろう!

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