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93歳女性アーティストのインスタレーションが飾る、「ディオール」2024春夏オートクチュール

© Laura Sciacovelli

ロダン美術館で発表されたディオールの2024春夏オートクチュールコレクション。マリア・グラツィア・キウリ率いるクチュリエチームによる約60体のシルエットは、ナチュラルな色使いから始まり、鮮やかなイエローやレッドまで、モアレや刺繍、フェザー使いから緻密なカッティング技術が光り、きらびやかな女性像よりもむしろ内面からの美しさがしみ出る知的で力強いものだった。

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© Adrien Dirand

会場を飾った「ビック・アウラ」とは?

マリア・グラツィア・キウリは、長年にわたり女性アーティストとのコラボレーションを積極的に試みている。今回会場の壁面を飾ったのは、93歳のイタリア人ビジュアルアーティスト、イザベラ・デュクロによるインスタレーション「ビック・アウラ」だ。

壁面にはまるで縦糸と横糸を思わせる不規則なチェック模様が描かれ、彼女が研究対象とするオスマン・トルコのスルタンたちが着ていた、肉体を超越した力の象徴である衣装を思い起こさせる23着の巨大なドレスが飾られた。マリア・グラツィアにとって「ビック・アウラ」とは、オリジナルを再現しても決して同じものにならないという観念に基づき、オートクチュールの唯一無二な服の世界そのものに行き渡っているものだという。どの服も、着る人の体に合わせることが定められ、独特のアウラ(注1)がある。そのため、ファッションの本質である卓越性を象徴するメゾンとして、アウラの概念をコレクションのテーマに据えた。

今コレクションを象徴するのは、1952年にムッシュ・ディオールが発表した「ラ シガール」という構築的なデイ・ドレスの再解釈だ。波のような模様を作るモワレ素材により、チェリーレッドのストラップレスドレスとして妖艶に現代的なルックとして生まれ変わった。

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ミスディオールを象徴するドレスは、鮮やかなイエロードレスとなり、いくつもの花の刺繍がまるで花畑のように施され、まばゆい輝きを放つ。

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トレンチコートのコットン素材を使用した大胆な襟や袖のコートに同素材のパンツを合わせるルックも新鮮だ。

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ほかにも、流れるようなシルエットを作り出すベルベットのブラックドレスや、刺繍が施されたダブルオーガンザのドレスの上に大胆なフェザーのケープを合わせた魅惑的なルックも登場。

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マリア・グラツィア・キウリにより、1952年にムッシュ・ディオールが発表した「ラ シガール」という構築的なデイ・ドレスをはじめ、過去の服がコンテンポラリーなルックとして再解釈され、イザベラ・デュクロの力強いインスタレーションと共に、次元を超えたオートクチュールの「アウラ」の存在を明らかにした。

アウラ(注1)アウラとは哲学者ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術」(1939年)よれば「芸術作品の独自性と真正性を反映するもの。つまりそれは集団の記憶に刻まれるもの」と定義されている

text: Keiko Suyama

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