前田敦子が語る、藤ヶ谷太輔との共演映画『そして僕は途方に暮れる』。“自分と向き合わない人とは関わらない”

ダメ過ぎてむしろ愛おしくなる部分を探る

──この映画を作るうえで、監督から「こうしてほしい」という要求や、「ここはこうしたほうがいいんじゃないか」といった相談などはありましたか？

私が演じた里美に対しては「とにかく優しい人でいてほしい」というのが監督からの一番の要望でした。「しゃべるときは語尾などに気をつけて」と言われて。ふだん、言葉って言い捨てちゃうようなときがあるけれど、今回はひとつひとつの言葉を「ゆっくり置く感じ」でしゃべってほしいと言われました。いつもとは全然違う話し方をしないといけなかったので、意識しながら演じました。

それから、今回の映画に関して監督は、菅原くんがどれだけへっぴり腰に見えるかをすごく大事にされていたんです。ダメすぎて、むしろちょっと愛おしくなっちゃうような部分を探っていた。なので、そういった点をどう表現したらいいかということを相談していただいたこともありました。あれは「主人公がどれだけダメに見えるか」を、みんなで一緒に作っていく作業だったなと思います。そこは舞台とはだいぶ変わったポイントかなと思いますね。

──演じた役柄ではなくて、第三者的な視点でこの映画を見たときに、どんなことを感じましたか？

菅原くんが次々と新しい人たちのところに行く物語なのですが、それがなんだかすごく豪華すぎて、最初はちょっとおもしろかったです。どんどんすごいキャラクターの人が出てくるじゃん、と思って見ていると楽しくなってくるというか。あとは、ひとりの人が、家族や友達、恋人などのところを転々とするなかで、相手が変わると彼のキャラも変わる。その点がすごく新鮮でしたね。確かに、人って相手によって態度変えたりするよね、人間ってそういうずるいところいっぱい持ってるよねというところを、ひとりの人間を軸にして観察できるところがすごくおもしろいなと思いました。

──最後に、前田さんが考えるこの作品の見どころを教えてください。

一見暗そうな作品に見えるかもしれませんが、暗いところもコミカルに描かれているので、笑って見てもらうのが一番いいのかなと思います。みんなが「この瞬間は経験したことあるな」というような、ちょっと人間的で、ある種痛い部分も感じられる作品です。ご覧になった方の状態によっても感じ方は変わると思いますが、この作品を客観的に楽しめた人は、現在すごくいい状態で生活できているのだと思います。

──見る角度を変えると全然違ったストーリーに見えてくる作品なので、そういうところもすごく面白いですね。

そうですよね。自分の人生に重ね合わせると、見え方が違ってくる部分がたくさんある作品だと思います。

Interview : Miyuki Kikuchi　 Text:Takumi Hanya　

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