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『鎌倉殿の13人』で躍動。三谷幸喜とミュージカルスターの浅からぬ縁

阿野全成役の新納慎也(左)と妻の実衣役の宮澤エマ ©NHK

現在放映中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、主人公・北条義時(小栗旬)の父・時政役の坂東彌十郎をはじめ、片岡愛之助、中村獅童、市川猿之助、尾上松也、市川染五郎と、歌舞伎俳優が多数出演していることはさまざまなメディアで取り上げられている。だが、もうひとつ、ある分野において華々しいキャリアをもつ俳優の数も"一大勢力"となっていることにお気づきだろうか。その分野とは、ミュージカルである。

日本を代表する劇団出身の実力派も

鎌倉幕府を開いた源頼朝のもとで政治のすべてを学び、第2代執権として実権を握ることになる北条義時を軸に、御家人たちの権力闘争を描く『鎌倉殿の13人』。ドラマは折り返し地点を過ぎ、いまは頼朝亡き後、御家人同士の対立が激化し、毎回誰かしらが謀殺されるという緊迫した展開が繰り広げられているところだ。

しかし、脚本の三谷幸喜は、本来なら重々しく深刻になってしまうストーリーに現代風のセリフ回しやコミカルな場面をはさみ込み、絶妙な匙加減で物語に味わいを持たせている。加えて、そんなシーンを演じる役者たちのなかにテレビでなく舞台を主戦場とする面々が多いことも、通常のドラマとは違う面白さを生み出している大きな要因と言えるだろう。なかでも特筆すべきはミュージカルのスターたちの存在だ。

まず、北条家に激しいライバル心を燃やす比企能員の妻・道を演じる堀内敬子と、朝廷の文官出身で宿老13人のひとりとなる知性派・大江広元役の栗原秀雄。ふたりとも劇団四季でキャリアをスタートし、退団後も数々のミュージカルに出演している。

道役の堀内敬子は、劇団四季で活躍し、退団後も『レ・ミゼラブル』(2000年)、『屋根の上のバイオリン弾き』(01年)など大作ミュージカルに出演。三谷作品初参加は舞台『12人の優しい日本人』(05年)。確かな演技力はもとよりコメディエンヌとしてのセンスも三谷に高く評価された彼女は、舞台『コンフィダント・絆』(07年)、『恐れを知らぬ川上音二郎一座』(07年)、映画『THE 有頂天ホテル』(06年)に出演している
道役の堀内敬子は、劇団四季で活躍し、退団後も『レ・ミゼラブル』(2000年)、『屋根の上のバイオリン弾き』(01年)など大作ミュージカルに出演。三谷作品初参加は舞台『12人の優しい日本人』(05年)。確かな演技力はもとよりコメディエンヌとしてのセンスも三谷に高く評価された彼女は、舞台『コンフィダント・絆』(07年)、『恐れを知らぬ川上音二郎一座』(07年)、映画『THE 有頂天ホテル』(06年)に出演している ©NHK
大江広元役の栗原秀雄は19歳で劇団四季に入り、『コーラスライン』『キャッツ』『ライオンキング』『夢から醒めた夢』などに出演。2015年、ミュージカル『タイタニック』に出た際、作品を観た三谷が出演者のシルビア・グラブに「あなたの相手役は誰? 彼はテレビに興味ないかな?」と訊いたことがきっかけで、大河ドラマ『真田丸』(16年)への出演が決定。以後、舞台『不信〜彼女が嘘をつく理由』(17年)、『大地』(20年)、テレビドラマ『風雲児たち〜蘭学革命篇〜』(18年)、映画『記憶にございません!』(19年)など三谷作品への出演多数
大江広元役の栗原秀雄は19歳で劇団四季に入り、『コーラスライン』『キャッツ』『ライオンキング』『夢から醒めた夢』などに出演。2015年、ミュージカル『タイタニック』に出た際、作品を観た三谷が出演者のシルビア・グラブに「あなたの相手役は誰? 彼はテレビに興味ないかな?」と訊いたことがきっかけで、大河ドラマ『真田丸』(16年)への出演が決定。以後、舞台『不信〜彼女が嘘をつく理由』(17年)、『大地』(20年)、テレビドラマ『風雲児たち〜蘭学革命篇〜』(18年)、映画『記憶にございません!』(19年)など三谷作品への出演多数 ©NHK

頼朝の乳母である比企尼(ひきのあま)を演じる草笛光子は、かつて宝塚歌劇団と並び称された松竹歌劇団(SKD)に1950年に入団、長年ミュージカルをはじめ幅広いジャンルの大作に出演し名女優の地位を確立した。

比企尼役の草笛光子が三谷作品と出合ったのは、三谷演出で上演されたニール・サイモン作『ロスト.イン・ヨンカーズ』(13年)。草笛は大河ドラマ『真田丸』にも出演しているが、さらにもう1作、三谷とともに“作った”作品が、前田哲監督の映画『老後の資金がありません!』(21年)だ。本作で三谷は俳優として出演。草笛との貴重な共演シーンは一見の価値アリかも
比企尼役の草笛光子が三谷作品と出合ったのは、三谷演出で上演されたニール・サイモン作『ロスト.イン・ヨンカーズ』(13年)。草笛は大河ドラマ『真田丸』にも出演しているが、さらにもう1作、三谷とともに“作った”作品が、前田哲監督の映画『老後の資金がありません!』(21年)だ。本作で三谷は俳優として出演。草笛との貴重な共演シーンは一見の価値アリかも ©NHK

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香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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