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菅田将暉の源義経は前代未聞の”サイコパスな闘犬”『鎌倉殿の13人』

源頼朝(大泉洋)を支え、後に鎌倉幕府第2代執権となる北条義時(小栗旬)を軸に、御家人たちのパワーゲームが繰り広げられるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。5月8日に放送された第18回はドラマ前半のクライマックス、源平合戦の天王山である壇ノ浦の戦いが描かれ、菅田将暉演じる源義経が魅せた「神回」となった。5月15日放送予定の第19回から、ドラマは日本史上もっとも有名と言っていい、兄弟の確執と残酷な運命を描いていく。

神木隆之介、滝沢秀明も演じた悲劇のヒーロー

今回、静御前を演じるのは石橋静河(右)。源義経(菅田将暉・左)とともに時代の渦に巻き込まれていく女性を脚本家・三谷幸喜はどう描くのか ©NHK

源義経は、これまで大河ドラマで幾度となく登場してきた人気キャラクターである。最初は1966年の『源義経』で、主人公の義経役は、当時見目麗しき歌舞伎俳優として人気を誇った四代目尾上菊之助(現・七代目尾上菊五郎)だった。

それから『鎌倉殿の13人』に至るまで、義経が登場したのは計7作。直近は2012年の『平清盛』で、神木隆之介が扮した。ちなみに神木は12歳の時、2005年の『義経』でも幼少期の義経役を演じている(成長した後は滝沢秀明)。いずれも、その時々のイケメン俳優が義経役を担っている。

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過去の6作に共通している義経像は、父の敗死により家族から引き離されて暮らしたことで孤独な影を宿し、弁慶と出会ったと伝えられる五条大橋での場面に象徴されるようにフェアリー感のある美丈夫で、武勇と知略に優れた若武者。だがしかし、そのために兄の嫉妬を買い非業の最期を遂げる、ピュアな悲劇のヒーローとして描いている点だ。

そうした従来のドラマにおける義経像を覆したのが、『鎌倉殿の13人』の脚本を手掛ける三谷幸喜であり、その意図を読み取り120パーセント表現したのが、菅田将暉である。

今回の大河では、弁慶(佳久創・右)はあくまで義経の従者のひとりという位置づけのため、頼朝周辺の人物たちと義経との関係がより際立つ ©NHK

菅田将暉は2008年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれたことがきっかけで芸能界入り。翌年、『仮面ライダーW』(テレビ朝日)で連ドラに初主演した。

このままイケメン系アイドル俳優の道を歩むのかと思いきや、13年に青山真治監督作品『共食い』の主役をオーディションでかちとり、アイドルの枠には収まらないことを演技で示す。父親と同じ忌まわしい血が流れていることを恐怖し葛藤する青年に扮し、センセーショナルなシーンも鮮烈に演じきった彼は、日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得。ここから、役柄を深く読み解き体現する役者として評価され期待される存在となっていった。

『糸』(20年)や『花束みたいな恋をした』(21年)で示したように現代の平凡な青年を等身大で演じることにも定評がある菅田だが、25歳にして日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に選ばれた映画『あゝ、荒野』(17年)や、ギャラクシー賞を受賞したドラマ『3年A組−今から皆さんは、人質です−』(19年)、読売演劇大賞で優秀男優賞と杉村春子賞をダブル受賞した舞台『カリギュラ』(19年)など、内にマグマを抱えたエキセントリックな男を演じる時、独自のアプローチで役に魂を吹き込み、作品は彼の独壇場となる。

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そんな菅田が『鎌倉殿の13人』で義経役に決まったと発表されたとき、これまでの大河ドラマでは見たことのない義経像が描かれるのではと期待された。

三谷幸喜は、“お決まり”の義経像とは違ったサイコパスな一面に焦点を当てている。

菅田版義経の登場シーン。何の躊躇もせず猟師を殺すというまさかの行動で視聴者をざわつかせた ©NHK

登場人物の人となりを顕著に表すのが初登場シーンだが、義経が本格的に登場するのは第8回。彼は平家打倒のため挙兵した兄・頼朝のもとに駆けつける途中、自分が射止めたと誤解した兎をめぐって猟師と争うのだが、義経は猟師を欺き、顔色ひとつ変えずに至近距離から射殺してしまう。その直後、義経は富士山に登るぞとキャッキャとはしゃぎ、人の命を奪ったことなどまったく頓着していないのだった。

兄の源頼朝(大泉洋・右)から木曾義仲討伐の大将に任ぜられた義経。出陣の挨拶に来た際、頼朝は自分が矢を射ったあと義経にもやらせるのだが、弟の矢は的に刺さっていた兄の矢を弾き飛ばしてしまう。その後のふたりを予言するようなシーン ©NHK

闘犬のように戦(いくさ)を渇望し、勝つためには手段を選ばない。ともすれば従来の義経ファンの反感を買うかもしれない義経像に説得力と輝きを与えた。菅田の真骨頂が発揮されている。

壇ノ浦の戦いで勝利を収めた義経は、「この先、私は誰と戦えばよいのだ。私は戦場でしか役に立たん」と呟く。その表情は笑っているようにも、途方に暮れているようにも見えた。

天才的なひらめきと恐れを知らぬ最強メンタルで連戦連勝の義経。御家人の梶原景時(中村獅童・右)はその才を危ぶみ、頼朝に義経の戦場でのふるまいを非常識だと上申する ©NHK

軍略の天才であっても、世渡り能力はゼロの義経が、壇ノ浦の戦いの後、陰謀渦巻く政治の世界で淘汰される過程を、三谷幸喜がどう書き、菅田将暉がどう表現するのか。目が離せない。

源氏の悲願であった平家滅亡の立役者、源義経。その功績が兄の不興を買い、さらには”日本一の大天狗”後白河法皇の画策も絡む。家臣として頼朝・義経のきょうだいを支えてきた北条義時(小栗旬・右)にも大きな決断が迫られる──。いよいよドラマは、前半のクライマックスを迎える ©NHK
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』 NHK総合ほか 毎週日曜 午後8時~ 
※放送から7日間は配信サービス「NHKプラス」で見逃し視聴が可能

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香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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