×

『六本木クラス』注目は鈴鹿央士。竹内涼真を陥れる”闇堕ち高校生”は、初出演作で新人賞総ナメの演技派

話題のドラマで活躍。『ドラゴン桜』では平手と共演も

鈴鹿クンは岡山県に生まれ、2018年にスカウトされて上京。同年にいきなり「第33回 MEN’S NON-NO専属モデルオーディション」でグランプリを獲得し、モデルデビューした。

『MIU404』(20年、TBS)や『ドラゴン桜』(21年、TBS)などのドラマで鮮烈な印象を残し、最近では『クロステイル 〜探偵教室〜』(22年、フジテレビ)で連ドラ単独初主演を果たすなど、めざましい活躍を見せる鈴鹿クン。彼の実質的なデビュー作といえるのが、映画『蜜蜂と遠雷』(19年)である。俳優として活動し始めた年に、100名を超えるオーディションで、風間塵というこの映画の大役を射止めた彼は、石川慶監督が「塵そのものだ」と唸ったのも納得の演技を見せている。

芳ヶ江国際ピアノコンクールに現れた無名の少年、風間塵(鈴鹿央士)。彼の演奏は審査員の間で議論の的となる

映画の舞台は若手ピアニストの登竜門、芳ヶ江国際ピアノコンクール。このコンクール出身者がショパンコンクールで優勝したことで注目され、例年になく高レベルの戦いとなっていた。

出場者の中には、コンクールにさまざまな願いを託して臨む者がいた。かつて神童と謳われたものの7年前にコンサートをドタキャンして以降、表舞台から消えていた栄伝亜夜(松岡茉優)は復活を。ジュリアード音楽院の王子と期待され、今回の優勝大本命といわれるマサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)は飛躍を。岩手の楽器店で働きながら年齢制限ギリギリで“最後の挑戦”に臨む高島明石(松坂桃李)は活路を。

そして、ピアノの巨匠ユウジ・フォン=ホフマンの最後の弟子であり、一次審査では審査員たちの間で賛否両論の物議を醸すほどの異彩を放った少年、風間塵もまた、ある目的を抱いていた。この16歳の天才、塵を演じたのが、鈴鹿クンである。

一次予選の舞台袖で、緊張に押し潰されそうになりながら出番を待つ亜夜(松岡茉優)は、不思議な雰囲気を纏う塵と出会う

この作品で、「素なんじゃないの?」と思わせるほど自然に“天才少年”になりきった演技が高く評価された彼は、報知映画賞、ヨコハマ映画祭、毎日映画コンクール、キネマ旬報ベスト・テン、日本アカデミー賞など主要映画賞の新人賞を総なめにした。

鈴鹿クンのみならず、松岡茉優や森崎ウィンも映画賞を獲得しているように、俳優たちの演技も素晴らしいが、本作に輝きを与えているのはそれだけではない。

塵や亜夜たちが演奏する楽曲を実際に奏でたのは、河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央と、国際的に活躍する有名ピアニストたち。そして、二次審査で演奏される「春と修羅」は、ロンドンを拠点に活躍し国内外で数々の賞を獲得している作曲家、藤倉大が本作のために作ったオリジナル楽曲であり、劇中音楽を担当した篠田大介とともに日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した。世界に誇る芸術家たちの音楽を堪能できるのも本作の魅力だ。

二次審査を終え、海辺で遊ぶ出場者たち。左から明石(松坂桃李)、亜夜(松岡茉優)、マサル(森崎ウィン)、そして塵

一次、二次、そして本選と、審査が進む過程で、塵の存在と奏でる音楽が、亜夜をはじめ周囲のピアニストたちに変化を及ぼしていく。今は亡き巨匠・ホフマンがコンクールに送った推薦状には「塵は天から我々へのギフトだ」と書かれていた。そして、彼を本物のギフトとするか厄災にしてしまうかは受け取る者たちにかかっている、とも。この映画は、天からのギフトによって成長する、音楽の神様に愛されし者たちの物語である。

「蜜蜂と遠雷」Huluで配信中
©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

【関連記事】必見映画・広瀬すずは大人の新境地、阿部サダヲは”殺人鬼”怪演…

Profile

香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

リンクを
コピーしました