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いま話題の人が演じた高純度ラブストーリー3選①菅田将暉

©2020映画「糸」製作委員会

2021年、エンターテイメントの世界で活躍した俳優に注目し、これまでの出演作からとくに純度の高い恋愛ドラマを紹介しています。まず紹介するのは芝居、音楽、私生活と例年にも増して充実ぶりを見せている菅田将暉さんです

中島みゆきの名曲から生まれた愛と絆の物語『糸』

人気・実力ともに若手No.1の若手俳優は? と問われたら、まず名前が挙がるのは菅田将暉だろう。

2009年、TVドラマ『仮面ライダーW』(テレビ朝日)でデビューし、2013年に主演した『共喰い』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、立て続けて話題作に出演し、エキセントリックなキャラクターから平凡な青年まで幅広い役柄を演じて存在感を示してきた。

2021年も『花束みたいな恋をした』から『CUBE 一度入ったら、最後』まで4本もの映画に主演。また、音楽シーンでも才能を遺憾なく発揮、マルチに活躍するアーティストである。

そんな菅田が出演したラブストーリーのなかで、改めて紹介したいのが『糸』(20年)だ。小松菜奈との共演は『ディストラクション・ベイビーズ』(16年)、『溺れるナイフ』(16年)、そして『糸』の3作。中島みゆきの名曲をモチーフに、平成という時代を生きる男女の絆が織りなす愛と人生を描いたこの作品は、観客動員数165万人を突破するヒットとなり、主演を務めた菅田と小松がそれぞれ日本アカデミー賞優秀賞を受賞した。

©2020映画「糸」製作委員会

二人の結婚で再注目されているが、ワイドショー的興味本位で観はじめたら絶対に「申し訳ありませんでした!」と反省したくなるような、丁寧に作られた純度の高い作品だ。

平成元年に北海道で生まれた高橋漣(菅田)と園田葵(小松)は、13歳の時に花火大会で出会う。お互いに好意を抱いた二人はいかにも中学生らしいかわゆい交流を重ねていたが、ある日、葵は忽然と姿を消す。一家で夜逃げしたのだ。彼女の行方を探す漣は、葵が実父を早くに亡くし、今は同居する母親の恋人に虐待を受けていたことを知る。

葵が札幌にいることをつきとめた漣は、葵を救いたい一心で、彼女の手を取り逃走する。しかし所詮は中学生。すぐに警察に保護され、ふたりは引き裂かれてしまった。

©2020映画「糸」製作委員会

時が経ち、成人した漣は地元に根を下ろして家庭を築く。一方、葵は東京、沖縄、シンガポールと彷徨いながらたくましく生きる。中島みゆきの楽曲にあるように、「わたし」が縦糸で、「あなた」が横糸であるとしたら、それぞれ全く別の世界でまっすぐ突き進む漣と葵の2本の糸は、交わることはないはずだった。しかし数奇な運命が二人を巡り合わせて……。

漣を見ていると、今は大切にしている家族があり、裏切る気持ちなど微塵もなくても、初恋の相手に対する思いは別の次元で純度を保ち熟成されるものなのか、と考えさせられる。それじゃあ今の伴侶がかわいそう、といえるかもしれないけれど、漣の家族愛にも偽りはない。初恋の人って、普段は思い出すことすらないのに、何かのきっかけで再会したら、瞬時に出会った頃のピュアなときめきを鮮やかに蘇らせる、強力な(家族にとってはある意味危険な)存在なんだろう。

『糸』Prime Videoにて配信中 ©2020映画「糸」製作委員会

女性視線で見ると、そんな漣に対して違和感を覚えても仕方ないはず。なのにむしろ応援したい気持ちにさせられるのは、実直で真摯な漣をリアルに表現した、ひとえに菅田の演技力のたまものである。また、相手役の小松菜奈はじめ、脇を固める倍賞美津子、永島敏行、榮倉奈々といった演技派が泣かせてくれる。人生いろいろあるけれど、真っ直ぐに生きていこう、と思わせてくれる作品である。

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香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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