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子育ては4か国目 女性社長が仕事と家庭の両立で大切にする価値観

ウイスキーの「シーバスリーガル」などで知られる世界2位のワイン&スピリッツメーカー、ぺルノ・リカールの日本法人トップのノジェム・フアドさんは、2人の幼いお子さんを育てながら日本市場の戦略を指揮しています。仕事と家庭の両立について「すべてにおいて完璧を求めず、ベストを尽くし、心地よいバランスを見つけることが大切です」と語ります。ノジェム・フアドさんのキャリアストーリーをお伝えします。

洗練された味覚を持つ日本の消費者を知ることは楽しい

ペルノ・リカールは、フランスに本社があり、世界でウイスキー、シャンパン、ワインなどを販売しています。日本市場では、特にシャンパンとウイスキーに力を入れています。ウイスキーは「シーバスリーガル」、シャンパンは「ペリエ ジュエ」などを販売しています。CEOとして素晴らしいチームを率い、会社のすべての分野において責任を担っていることに、仕事のやりがいを感じています。

また、主にマーケティング畑を歩んできた私にとって、さまざまな消費者のタイプやトレンドを知ることは、大きな楽しみの一つです。特に日本の消費者の方は、匠の技すなわちクラフトマンシップを大切にし、ラグジュアリーな世界観に対しても意識が高く、さらに洗練された味覚の持ち主であることを知り、とても興味深いです。

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成功は自分一人ではなくチームで勝ち取るもの

仕事をするうえで最も大切にしているのは人、チームです。どんな仕事、プロジェクトも一人の力では成功できません。私自身が何を達成したいのかではなく、私は何を周りの人と一緒に達成したいのか。一緒に何ができるかにポイントを置いてきました。自分の知識だけでは限界があります。いろいろな観点、経験、背景を持った人で構成されるチームは強くなります。多様性、ダイバーシティーに富んだチームを組んで、それぞれの専門性や知識を持ち寄ることで正しい方向に進めると思います。

仕事の安定を感じはじめたら成長が止まる

今までのキャリア人生を通して私自身が心がけてきたのは、「安心、安定を感じはじめたら自分にとっての成長が止まっている」ととらえることです。自分の中の「コンフォートゾーン」にとどまることを絶対にしないようにしています。いつも少し背伸びをしながら成長を続けることが私のキャリア構築でとても大事なことでした。自分の知らないことに手を伸ばし、広告宣伝からマーケティング、営業、財務といろんな分野を学びました。時には「もしかしたら全く見当違いの質問をしているかもしれない」と思っても、わからないことは必ず周囲に聞くようにして知識を身につけてきました。

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仕事と家庭、どちらも大切にする その時に何が一番大切かを選ぶ

仕事と家庭の両立については、多くの女性が悩んでいると思います。実際、仕事をしながら家庭を持つとともに、さらにそれを両立させることは容易に達成できるものではないと思っています。特にちょうど30代の働く女性は、さまざまな選択肢があり、いろいろなことに取り組んでいかなければなりません。人生でその時々に「何が一番大事か」「何を優先すべきか」を知ることが大切です。

仕事も家庭もパーフェクトを目指して悩まれているかもしれません。まずパーフェクトはありません。何もかもすべての面においてパーフェクトを目指すのは無理です。ベストを尽くして、楽しくやりがいのあるバランスを見つけましょう。自分の持っている力、ポテンシャルを信じましょう。恐れることは何もないです。自分を信じることができれば、失敗しても自分にとっての学び、成長のための糧ととらえることができると思います。自分に自信を持って信じることができるようになれば、いろんな選択肢がある中で、何が大事かは自然とわかってきます。自分にとってその時に何が一番大事かわかるような自分自身の価値観がしっかりと確立されていきます。

子どもたちに「おやすみ」と言う瞬間は一緒にいたい

私にとって教育やキャリアの構築が人生での最優先事項でした。私の場合は、母をはじめ祖母や叔母が仕事を持っていたため身近に働く女性のロールモデルがいたことが影響していると思います。仕事をしながら子育てをしている今は、子どもといつも一緒にいることが大事なのではなく、「この時は絶対に一緒にいる」といった価値観をしっかり持つようにしています。子どもが寝る前、ベッドに入って「おやすみ」と言う瞬間は一緒にいてあげたいと思っています。仕事で遅くまで働く時もありますが、寝る瞬間だけ子どもと一緒にいて、子どもが寝たら仕事をするなど柔軟に対応しています。自分の中で何をその時に優先するかがわかっていることが大事です。子どもたちも含めて家族全員がお互いにできることをすることが大事です。夫も子育てや家事にも平等に関わっているので、いいチームだと思います。

すべてはアブソルートウオッカとともに始まった

私は学生時代をカナダで過ごし、仕事でニューヨークをはじめスウェーデン、香港、ロンドンで暮らしました。現在の仕事のきっかけは、学生時代にウオッカの「アブソルート」のボトルをモチーフにした広告キャンペーンに触れたことです。「アブソルート」の広告キャンペーンにはアンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、エットレ・ソットサスやヘルムート・ニュートンといった名だたるアーティストが参加し、アブソルート・アート・コレクション(AAC)として知られています。

撮影はすべて繁田統央

早朝にピラティス 自分だけの時間で気分転換

2人の子どもたちは、私の人生で最も大切な存在です。子どもたちはスウェーデンで生まれ、これまでに滞在した国は日本で4か国目になります。子どもたちが新しい場所に行き、新しい場所になじんで成長する姿を見届けるのは、プライベートでは一番楽しい時間です。家族旅行も大好きです。新しい場所で新しい経験を積み、家族で共有しあうのも楽しいです。自分だけの時間をつくることも大事にしています。今は、ピラティスを週に2、3回、早朝にしています。体を動かして健康になるとともに気分転換になります。

ファッションは今の自分を映し出すもの 少しエッジをきかせて楽しむ

ファッションも美容も食べることも大好きです。日本の食はすばらしく、新しい味との出会いにいつもワクワクしています。着るものは自分を映し出すものです。自分自身をありのままに映し出しながら、その時々の場面に応じて適切なものを着ることを心がけています。それが快適さにつながり気分も上がります。ファッションが大好きなので、自分自身がファッションを楽しめるようにしたいと思っています。今日の靴もそうですが、少しエッジをきかせて楽しみや遊びがあることにこだわっています。

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ノジェム・フアドさん 1978年生まれ。カナダのコンコルディア大学政治学学士とマギル大学マネジメント&マーケティング学士。大学卒業後、大手広告代理店TBWAを経て2008年ジ・アブソルート カンパニー入社。2011年に同社リージョナル副社長(アメリカ)、2012年アブソルート ウオッカ グローバル ブランドディレクター・インテグレーテッドコミュニケーション、2016年ペルノ・リカール グローバル・トラベル・リテール アジアのマーケティングディレクターなどを歴任し、2017年ペルノ・リカール グローバル・トラベル・リテール マーケティング副社長(ワールドワイド免税市場マーケティングの最高責任者)に就任。2019年 1月からペルノ・リカール・ジャパン株式会社代表取締役社長(President & CEO)


【キャリアストーリー】では、自分らしく働く女性のインタビューを通して仕事や生き方のヒントになる言葉をお届けします。

Profile

正本恭子

読売新聞記者として企業や官公庁・自治体などを取材。その後、ビジネスのトレンドをはじめライフスタイルやワークスタイルなどをテーマに記事を執筆している。

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