×

NHK朝ドラ「らんまん」のモデル、牧野富太郎が愛した高知の自然を巡る

NHKで放送中の連続テレビ小説「らんまん」の主人公・万太郎のモデルとして注目を集めている牧野富太郎。日本の植物分類学の父、牧野博士を生んだ高知県は、豊かな自然に満ちあふれている。五感をフルに使って満喫できる場所の数々は、仕事などで疲れた心と体を癒やすにも最適。牧野博士にちなんだ場所を中心に紹介しよう。

高知県立牧野植物園提供

1862年、高知県佐川町で生まれた牧野富太郎は幼少期から植物に興味を持ち、独学で研究。全国各地で植物採集や野外調査を行い、生涯を植物分類学の研究にささげた。新種や新品種など1500種類以上の植物を命名。収集した標本はなんと40万枚以上。日本の植物分類学を世界レベルに引き上げた立役者であり、全国で植物研究家や植物愛好家などの育成にも努めたすごい人なのだが、その天真らんまんな人柄は写真で見る通り。つい「牧野さん」と呼びたくなる、どこか親しみを感じる人だ。

「歩ける植物図鑑」 高知県立牧野植物園(高知市)

高知県立牧野植物園提供

牧野富太郎の業績を多面的に知ることができるのが、高知県立牧野植物園(高知市)。亡くなった翌年の1958年に開園した。約8ヘクタールの敷地に3000種類以上の植物があり、四季の変化が楽しめる。
木材をふんだんに使い、モダンな雰囲気の建物は、建築家の内藤廣氏が手がけた。本館は入ると、まず美しい中庭とウッドデッキが目に飛び込んでくる。中央部には牧野博士が台湾で発見したタイワンマダケが植えられており、何ともすがすがしい空間だ。

園内を歩くと、ワッペンのついた植物が……。なんと、「らんまん」で紹介された植物。また、牧野博士が発見した水草で珍しい食虫植物の「ムジナモ」にも出合える。今では絶滅危惧種となっているので、またとない機会だ。

牧野博士の生涯を知るには、展示館に足を運びたい。植物採集の際に愛用していた胴乱というブリキのカバンの複製などのほか、全国から採集した植物を挟んだ新聞紙の束など、当時の様子を垣間見ることができるものばかりだ。晩年を過ごした東京の書斎も再現され、衰えを知らぬ牧野の情熱が伝わってくる。
このほかにも、熱帯の植物が生い茂る温室、晴れていれば眺望抜群のこんこん山広場など、趣向に応じていろんな楽しみ方ができる。

10月1日まで、牧野博士の標本に魅せられた写真家の菅原一剛さんが、1億5000万画素のデジタルカメラと技術を駆使してポートレートを撮るように標本を撮影した作品を集めた「MAKINO 植物の肖像」展も開催されている。

神秘的な洞窟、伊尾木洞(安芸市)

高知県の自然の多彩さの一端が見えるのが、国道55号沿いの伊尾木洞だ。波の浸食でできた天然の洞窟は足を踏み入れると、ひんやりした空気が流れる。シダに覆われ、別世界に来たような錯覚に陥るほど。ここにも牧野博士は植物の採集にやってきた。暖地性シダ植物が1か所に生えそろうという全国でも珍しい場所で、国の天然記念物に指定されている。足元に注意しながら全長40メートルの洞窟を抜けると渓谷になり、滝もある。上から差し込む光は美しく、ここでの深呼吸は格別だ。

美しい街並み 牧野さんのふるさと、佐川町

かつて商家や酒蔵が立ち並んだ城下町、佐川町。酒造りを営んでいた裕福な商家のひとり息子として生まれた牧野は、この豊かな自然あふれる中で幼いころから植物採集に励んだという、いわば原点の地。今も酒蔵や古民家などが残る美しい街並みが、当時の姿を物語る。生家跡は再生されて「牧野富太郎ふるさと館」となり、直筆の手紙や幼少期に過ごした部屋なども再現されている。

何より楽しいのが散歩。酒蔵や古民家は当時の雰囲気をとどめている。江戸時代から酒造業を営んできた「旧浜口家」の住宅は、喫茶があるほか、お土産を販売する観光拠点となっている。佐川町産の生乳を使ったソフトクリームも味わえる。

ふと道路に目を落とすと、花が描かれたかわいいマンホールがいくつもある。つい写真を何枚も撮ってしまったが、こうしたものも、牧野博士が生まれ育ち、今も町民が草花を愛するこの町らしさかもしれない。

関連情報

リンクを
コピーしました