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【パリ駐在員レポート】多彩な新作が披露されたハイジュエリーコレクション

新型コロナウイルスの感染拡大により、パリやミラノコレクション、そしてスイスの時計展示会の多くがオンラインでの開催となりました。そんな中、ワクチン接種が進み、感染状況も一時的に落ち着いた7月上旬のパリでは、ハイジュエリーコレクションが招待者を招いたリアルな展示会として開催されました。革新的、アフォーダブル、サステナブル、希少なジェムストーン……。多様な価値観が共存する今の時代を反映するように、各ジュエラーは多彩なテーマを打ち出しました。

ブシュロンは「ホログラフィック」をテーマに、自然の儚い美しさを捉えた一瞬の感動を革新的な光の色調で表現しました。10人以上のモデルが新作を身に着けて登場し、その絶妙な色の移り変わりを披露してくれました。例えば、クリスタルブレードのネックレスは、アトリエに差し込む太陽光によって映し出された影を表現するため、その構造を研究したそうで、光が射し込む角度や明るさや肌とのコントラストによる色調の変化に魅了されます。 




ブシュロン(ネックレス):ホログラフィックのコーティングが施されたプレートの輪郭にはダイヤモンドの輝きが加わり、その中心に20.21ctのイエローサファイアが煌めく

ショーメは、店を構えるパリ・ヴァンドーム広場中央にそびえる円柱の螺旋パターンからインスピレーションを得たモチーフに、モダンな解釈で躍動感を加えたデザインが目をひくコレクションを発表。印象的だったのは、比較的手に入れやすい価格のアフォーダブルなラインも用意していたこと。パリを代表するホテルの一つリッツ・パリにある洗練されたレセプションルームに展示されたコレクションは、優しくほどけるリボンのように軽やかでありながら、落ち着きのあるシンプルなデザインで、凛々しさが際立っていました。 

トルーサド ドゥ ショーメ コレクション(上:ネックレス、下:ブレスレット)さまざまに姿を変える螺旋モチーフは、生命の絶え間ない動きや愛の偉大さを詩的に表現している




ヴァン クリーフ&アーペルはその歴史を通し、さまざまなジャンルの芸術にオマージュを捧げてきました。ダンスもその一つで、1940年代初頭に誕生したバレリーナ クリップは、瞬く間にメゾンを象徴するシグネチャーとなりました。ヴァンドーム広場の一角にある本店内の展示会場では、バレリーナ クリップの歴代アーカイブ作品が飾られ、ダンスに込められた伝統と情熱を物語っていました。 このコレクションには、イエローゴールド、ターコイズ、ラピスラズリの貴石が配された新作も加わりました。スパンコールによる豊かなレリーフ効果と、バレリーナの衣装にあしらわれたダイヤモンドの煌めきで躍動感が増し、繊細なシルエットに命が吹き込まれたように見えます。

ヴァン クリーフ&アーペル(クリップ):輝きと躍動感がひとつとなり、バレリーナの繊細なシルエットに命が吹き込まれる

ポメラートは、1990年から2014年までの間のコレクションから保存されたアーカイブピースやストーンを組み合わせ、刺激的なスタイルのハイジュエリーを新たに生み出しました。このアイデアは、ポメラートのクリエイティブな精神を表現しているだけではなく、ブランドのサステナブルな未来へのコミットメントを反映したメッセージにもなっています。 展示会場にはプレスが1組ずつ限定で招待され、新作コレクションのコンセプトや背景をしっかりと伝えようと、作品1点ずつ丁寧に説明していたのが心に残りました。 





ポメラート(ネックレス):漆黒のジェット、ローズゴールドのチャーム、遊び心あるカラーの眩いタッセル、3つのアーカイブが組み合わさり、1つのハイジュエリーとして生まれ変わる

ピアジェは、職人が450時間以上をかけ、希少なジェムストーンを美しいジュエリーへと昇華させました。しなやかで快適な着け心地のネックレスには、最も高価とされるファンシービビッドイエローカラーの8.88ctクッションカットダイヤモンド。このダイヤモンドに、ブルーサファイアとレッドスピネルが組み合わさり、さらにスペサタイトガーネットとダイヤモンドがセットされています。 ゴールドを基調色とした煌びやかな展示会場は、人々が集うイブニングパーティーを彷彿とさせ、気分を高揚させてくれました。





ピアジェ(ネックレス):一方を背中側に垂らして着用できるほか、昼から夜まで装いに合わせて取り外し可能で、ダイヤモンドチェーンはブレスレットとしても着用でき、計6通りの着け方で楽しむことができる

世界中のメディアやVIP顧客で賑わうはずのパリのハイジュエリーコレクションですが、今年はまだ自由往来ができる状況ではないため、現地在住のジャーナリストを中心に人数限定の開催で、全体として落ち着いた雰囲気となりました。また、コロナ禍の前は富裕層を対象に、豪華絢爛たる宝飾品の新作発表が大きな方向性になっていたようですが、今回はデザイン的にも価格的にも多様性に富んでいました。ジュエラーごとに時代や方向性の捉え方が異なり、興味深いコレクションとなりました。

Profile

島田和春

読売新聞東京本社広告局パリ駐在事務所。オリンピックTV観戦興奮冷めやらぬうち、最近は、メッシのパリ・サンジェルマンFC加入に熱狂している。 

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