×

130周年を迎えたドイツの「ウェレンドルフ」のCEOクリストフ・ウェレンドルフが来日。ジュエリーに込められた思いとは。

ドイツが誇るジュエリーのウェレンドルフが今年130周年を迎えた。最高の素材にこだわり続け、限られた熟練のゴールドスミス(金職人)にしか作れない逸品の数々は世界中の女性に愛されている。記念イベントのために来日したクリストフ・ウェレンドルフCEOにブランドの神髄やジュエリーに込められた思いについて語ってもらった。

ウェレンドルフCEOインタビュー

ウェレンドルフの誕生は、1893年。金細工師のアレクサンダー・ウェレンドルフが「黄金の都市」として知られるドイツのプフォルツハイムで創業した。18金の金糸を撚(よ)って編み上げ、シルクのように柔らかく滑らかな肌触りの「シルクコーデル」やインナーリングが回転する「マジックリング」など、職人たちの高度な技術に支えられた銘品の数々を生み出している。

──130周年に対する思いは。
「まずは感謝の気持ちです。私たちが愛を込めた最高の品を世界中の方々に発信できる機会でもありますし、世界中にいる友人たちと一緒にお祝いができることを大変ありがたく思っています」

──130年は長いのでしょうか、それとも短いのでしょうか。
「私たちのビジネスモデルはとても特殊です。曽祖父が金職人で、父も、私も訓練を受けた金職人であり、息子もそうです。それぞれの妻に向け、愛情を込めた他にはないジュエリーを作ることに力を入れてきました。それが他の女性たちの評判になり、気に入ってもらっています。私たちのビジネスの基本は、愛情から来ているのです。今までにないジュエリーを作り、そして女性たちを驚かせることを目指しています。だから急いだりするのは、私たちの敵。時間をかけ、完璧になるまで創作を続けます」

──今は時代のスピードが速くなり、次々に新しい製品が登場する時代です。
「愛情は急いだり、加速したりすることができますか。私たちには『EMBRACE ME』という手首に巻き付けるブレスレットがあります。かつての女性たちは、メイドや夫など誰かにブレスレットをつけてもらっていたかもしれません。しかし、現代はそうではありません。そこで金で出来ており、留め金がなく、巻き付けられるものを生み出しました。しかもしなやかです。こうしたことを可能にするには、金が柔らかく、柔軟性がなければなりませんでした」

──出来上がるまでの過程は困難も多く、時間がかったということですか。
「そうでなければ、ほかの金職人がやっていたでしょう。まねして作ることもできたでしょう。アイデアを思いつき、構想をまとめて、作っていくという工程は大変なものがあります。17年かかりました。この間、もちろん失敗もありましたし、諦めかけたこともありました。でも、愛が根底にありますので、妥協したり諦めたりすることはあり得ません。母親が子供のハイハイから起き上がって歩くまでを信じて育てていくのと同じことです」

──ウェレンドルフのジュエリーの誕生には常に家族の愛がありますが、その愛を金職人とも共有するのは難しいことではありませんか。
「工房には100人の金職人がおり、私と共に経営に携わる弟ゲオルクは工房の責任者です。毎日職人たちと顔を合わせて、ひとりひとりに声をかけます。金職人も家族ですので、名前も覚えており、彼らの家族のことも理解していています。ある意味、みんな家族の一部なのです」

ウェレンドルフ リング
ウェレンドルフ リング

「正式にウェレンドルフの職人になるためには、まず3年間弟子として働きます。そのあと2年間マイスターとして工房に勤め、その後の2年は特別なトレーニングを受け、ものづくりには妥協しないということを学びます。7年で初めて職人になれるのです」

──ウェレンドルフはひとつのジュエリーを生み出すのに長い時間をかけています。次に登場するのはどんなものなのでしょうか。

ウェレンドルフ リング

「The 2024 Ring of the Year」です。世界で224点しかありません。30層もの異なる深さのエングレービングを施すことで、奥行きのある輝きを放ちます。

──ウェレンドルフはオリジナルのコールドエナメルを使っていますが。
「ジュエリーに様々な色合いを与え、日常使いに適しています。活動的な女性たちが毎日つけるためにはぶつけても強くなければなりません。見た目はソフトだけれど強い。エナメルも竹のようにしなやかだから強く、衝撃を吸収してくれます」

──それがウェレンドルフの真価ですね。
「そうです。私の妻は毎日つけていられるものでないとほしくないと言っています。女性によっては夫から贈られるのを待っている人もいますが、自立した強い女性は自分でそうしたジュエリーを探し出しますから」

──130年もの間、ジュエリーを作り続けてきたウェレンドルフは、この先何を目指すのでしょうか。
「私は占い師ではないので、将来を予言することはできません。これはあくまで私の願いですが、次の世代も『妥協しない』という考え方を継承し、世の中の女性たちが革新的なジュエリーを望む限り、『Made in Germany』の最高級品を作り続けてほしいと思っています」

聞き手:宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)

ドイツ発の「ウェレンドルフ」。人に寄り添う優美なジュエリーを

リンクを
コピーしました