ryuchellがパラリンピックでも注目された車いすダンサーと語る「自分らしさを貫く生き方」
2022.11.17
2022.11.17
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──「TRUE COLORS FESTIVAL」というイベントの名前にちなみまして、今のご自身を何色だと思いますか。
ryuchell:ピンクです。8月に「新しい形の家族」を発表する前は、夫として男として、こうでなきゃいけない、という気持ちがやっぱりどこかにありました。今は、自分の中に唯一眠らせていたものを出すことができるのがすごく楽しくて。今どう生きるか、未来をどうしていくかなど、人生を見る視力がすごくあがったんです。
かんばら:ダンスモードの時は黒。逆に真っ白かもしれません。普段は……、でもやっぱり明るい色ではないかな。グレーだったり、茶色だったり。黒よりはちょっと明るいけれど、そんな感じです。
──いつもありのままで活動されている印象です。緊張などすることはありませんか。
かんばら:リオパラリンピックでは、パフォーマンスが始まった時にワーッという大歓声で、地面が揺れるというか、空気が揺れて腕の産毛が震えるのも感じるくらいでした。当時の写真を見ると、余裕がない表情ばかり。全然ダメでした。そこから、ステージの大きい小さいにかかわらず、人前で踊る機会をたくさん作ろうと決心しました。自己紹介するときもちょっとダンスをするなどして、機会をたくさん作りまくったんです。そうしたら、だんだんといい緊張、いい集中の中でパフォーマンスできるようになりました。練習を重ねたというか、人前で踊る機会をたくさん作ったことで、悪い緊張はしなくなりました。
ryuchell:お仕事では、緊張したことはありません。今思い返してみても、最初にテレビに出たときから全然緊張しなかったんですよね。仕事の時は猫かぶっているからかもしれません(笑)。ただ、プライベートの方が緊張します。食事をするときなど、自分の素が一番出ますから。
──今いる場所にたどり着くまで、困難をどのように乗り越えてきましたか。
かんばら:小学校3年生ぐらいの時に、これはもう一生歩けないとわかったのです。他の子ができることで、僕がどんなに一生懸命努力してもできないことがある。母親が正直に「一生歩けない」と教えてくれました。そのあとはすごく泣いて、頭の中は真っ白になりました。
急に何かがきっかけで障害を受け入れることはできなかったんです。本当にちょっとずつ、歩けなくても楽しいことはある、と。何年も時間をかけて、前向きに諦めることができました。
例えば、子どもが2人いるんですが、子どもを抱っこして運ぶことはできないので、座布団やスケボーに乗せて、家の中で運ぶとか。道具に頼って違う方法を見つけていくのも悪くないな、と気が付きました。
ryuchell:僕は性格悪い人ともいっぱい出会ってきたし、傷ついて自分を隠した時期があります。でも、出会って良かった人から受けた恩が自分を強くしてきました。どんな出会いでも自分を強くしてくれるきっかけにはなったから、困難は人と出会うことで乗り越えてきたのかもしれません。
──今後の目標を聞かせてください。
かんばら:大きいステージに立ちたいっていう気持ちより、自分自身のダンスのスキルを向上させたい方が強いです。今年はブレイクダンスにチャレンジしたんですが、新しいものに挑戦していき、表現の幅を広げていきたいです。
ryuchell:その時その時、自分が気持ちよく生きていたいです。芯は持ちながらもしなやかに柔らかく。そんなふうに生きていきたいです。
photo: Kenta Aminaka、interview & text: Momoko Okubo
日本財団主催「TRUE COLORS FESTIVAL-超ダイバーシティ芸術祭-」詳細はこちらから。
ryuchell(りゅうちぇる) タレント・株式会社比嘉企画代表取締役。1995年生まれ、沖縄県出身。個性的なファッションと強烈なキャラクターで注目を集め、パートナーのpecoと多数のバラエティー番組に出演。1児の父となった現在は育児やSDGs・報道番組への出演など活動の幅を広げ、2020年よりNHK「高校講座・家庭総合」のMCを務める。自身のSNSでの”自己肯定感”に関する発信がたびたび話題となり、2021年に初の著書となる「こんな世の中で生きていくしかないなら」を出版。現在は女性誌等で4本の連載を持つ。
かんばらけんた フリーの車いすダンサー、サーカスパフォーマーとして活動。車いすの上での逆立ちや空中芸など、上半身を最大限に生かした技が特徴。先天性の二分脊椎症という障害をもって生まれる。テレビCM出演や学校講演も行っている。リオデジャネイロ2016パラリンピック閉会式、東京2020パラリンピック開会式、NHK紅白歌合戦「マツケンサンバII」に出演。
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