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【2023年国際女性デー】子供の晴れの日なのにマスクで顔を隠すー。あるシングルマザーの存在をきっかけに生まれた『コスメバンク プロジェクト』が目指す世界

3月8日は「国際女性デー」。1904年に婦人参政権を求めたデモがニューヨークで行われたことが起源となり、1975年に国連によって制定された。ジェンダー平等の実現を求めて声を上げ、行動する日であり、世界中で様々なデモやイベントが開催された。

日本でも女性のためのプロジェクトが次々立ち上げられている。今回は“女性と地球にスマイルを”を合言葉に、一人でも多くの女性のもとへ化粧品を届ける『コスメバンク プロジェクト』を誕生させた山田メユミさんに話を伺った。

“人を笑顔にしてくれる化粧品。なのに、逆にそれが手に入らないことで悲しむ女性がいるなんて……”

『コスメバンク プロジェクト』は、シングルマザーら経済的困難を抱える女性へ行先の決まっていないコスメを届ける活動をしている。国内最大の美容系総合クチコミサイト『アットコスメ(@cosme)』を共同創業したことで知られる山田さんが、なぜ『コスメバンク プロジェクト』を立ち上げたのだろうか。

「きっかけはある女性の存在でした。その方はシングルマザーだったのですが、お子さんの晴れの日に口紅1本もなく、すっぴんでは恥ずかしいからマスクで顔を隠して参加した、と知人を介して伺ったんです。長年、化粧品業界で仕事をしていながら、まさかそんな女性がいるなんて、と驚きとともに気づいていなかったことに恥ずかしくも感じました。化粧品は人をエンパワーメントするために、幸せになってもうらうために存在する物なのに、それが手に入らないことによって悲しい思いをされている女性が日本でも存在するということに衝撃を受けました。

一方で、化粧品業界を見渡せば行き先のないものが一定数出ている。季節ごとの入れ替えやリニューアルによって品質には問題ないけれど店頭には並ばない商品たちです。アパレルとは違い、化粧品はリサイクルするのも難易度が高いんですよね。もちろん各化粧品メーカーさんも努力はされていますが、やはり余剰在庫は出てしまう。そこで、それを繋げない理由はないと思い、以前からお付き合いのある企業へ相談してみたことが始まりです」

各企業の支援により、半年後には初回のギフト発送を実施

『コスメバンクプロジェクト』が過去に贈った「コスメ詰め合わせギフト」/写真提供:コスメバンクプロジェクト

「女性の話を耳にしたのが2021年の春。それから自分が思っていた以上のスピードと規模感でプロジェクトは進み、2021年のクリスマスには初回のギフト発送ができました。お声をかけた企業さんからも快く支援していただけました。また、この活動は企業さんのお力はもちろん、全国各地で女性支援をされているNPO団体との連携も重要です。そういった団体を束ねている協議会や組織との繋がりも大切にしています」

2022年のクリスマスには38社もの企業の支援が集まった

ギフト発送には化粧品メーカーや自治体、大学生らがボランティアで参加/写真提供:コスメバンクプロジェクト

化粧品は各企業の協賛により集められるとしても、それを発送するためには運送コストや人員も必要だ。

「昨年のクリスマスには38社の企業さんから化粧品や寄付金のご提供があり、一部梱包などにかかる人的支援もいただきました。さらに、自治体や大学の学生さんも梱包に参加してくれました」

メイクをする時間がないのではなく、物理的に手に入れることができないという現実

メイクアップ講座の様子/写真提供:コスメバンクプロジェクト

化粧品を届けるだけでなく、シングルマザー向けに就業支援のためのメイクセミナーを開くなど、活動の幅はどんどん広がっている。

「ただお渡しするだけでは使い方がわからないという方も。プロフェッショナルによるメイク講座で、参加者さんの顔つきも始まる前と後ではまったく変わり、女性にとって化粧品がどれほど不可欠なものか目の当たりにしました」

シングルマザーだから忙しくてメイクができないのではなく、そこには所得という問題があるそう。

「ギフトをお送りした方々の属性をアンケート調査したところ、平均年収が200万円に満たない方々が7割以上もいました。メイクを楽しむ余裕がないのではなく、物理的に不可能なんです。まずお子様の食事が最優先で、自分のことは食事さえも我慢する。中には生活保護を受けている方もいらっしゃるので“自分には無縁なものだと思い諦めていた”という声も。ともすれば嗜好品、贅沢品とも捉えられる化粧品ですが、コスメを通じて自分のケアをすることでリラックスできたり、自信に繋がったりと自己肯定感をあげてくれるものなのだと、この活動を通じて再認識することができました」

『コスメバンク プロジェクト』が目指す未来

「地域に根付く女性支援を目指して、児童扶養手当を受給される方へコスメギフトをお渡ししたり、メイクセミナーを開催したりと自治体とのお取組みを少しずつ開始しています。コスメバンク プロジェクトの活動を通じてシングルマザーと行政との架け橋になれればと思っています。またママが元気になられることでお子さんなど周囲の方々にも笑顔の輪が広がることを願い、今後も多くの企業や団体の皆様とともに、活動を続けていけたらと願っております」

edit: Mie Arisumi

関連情報

Profile

山田メユミ/やまだ・めゆみ
化粧品メーカー商品開発部在職中に始めたメルマガへの反響をきっかけにコスメ情報サイト『アットコスメ』を企画立案。1999年にアイスタイルを共同創業。女性の活躍の在り方を支援する活動が評価され「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017」個人部門グランプリを受賞。

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