もっとも、地階にはあまり降りたことはなかった。贈答品が中心で自分にとっては高級すぎて、冷やかしで入るのがはばかられたからだ。それがリニューアルされたという。訪ねてみると、「FIND OUT ABOUT NIPPON」というコーナーが新設されていた。「おうち時間」が増えたのに合わせ、それを充実させるための四季折々の味覚を日本各地から選りすぐって販売する。もっとも、名産のお取り寄せだけなら、様々な雑誌が特集しているし、ネット通販の方が手軽で便利なのではないか。
プロが提案する食のペアリングにただただ驚く
それが違った。単に魅力的で希少な日本の食品を販売するだけでなく、新しい食体験を提供する東京でも得がたいスポットとなっていたのだ。プロデュースは、数々の「DINING OUT」や地域の魅力を発信するウエブメディアの運営を行ってきた「ONESTORY」。それを聞いただけで、美食経験の豊富な『マリ・クレール』フォロワーなら胸騒ぎがするのではないか。食の専門家たちが「FIND OUT ABOUT NIPPON」のためだけに食材のペアリングを提案。その組み合わせに多くの人が驚くはずだ。
コーナーにはペアリングの詳細な説明パネルも。それを眺めているだけで食欲がわいてくる
純米酒と柿のドライフルーツ、そして実山椒
例えば、味わいを重視した純米酒造りで知られる冨田酒造(滋賀県長浜市)の「七本鎗 武者修業 木桶仕込み」(取り扱い実店舗は和光のみ)と、陽菜実園の「ひなみ柿 ドゥミセック/デ セック」(東京都内取り扱い店舗は和光のみ)の組み合わせ。後者は奥能登の農家が栽培から手がけるひなみ柿の完全無添加ドライフルーツ。それに飛騨山椒の「実山椒」を添える。ドライフルーツの上品な甘みと純米酒のきれいな甘口が口の中で渾然一体となり、実山椒が後味をすっきりと引き締める。何とも複雑で新鮮! 日本酒ソムリエで、「恵比寿 GEM by moto」を営む千葉麻里絵さんの提案だと聞いて「なるほど」と頷いた。