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<LIFE WITH MUSIC>第3回 ロンドンへひとり旅(2)

(c)Maika Loubté

【11月28日 marie claire style】今回は、ロンドンひとり旅の第2弾として、とある人物との出会いを振り返ります。

 去年の秋、ロンドンではほぼ友人知人の当てがなかった私ですが、滞在中に唯一、雑誌編集の方の紹介で、とあるフォトグラファーとそのご家族に出会いました。1963年生まれの彼は、とんでもなくエネルギッシュ、そしてお茶目で冗談好きな誇り高きロンドナー。本当に素敵な紳士でした。ロンドンを拠点にあらゆる有名アーティストを撮影しており、まさにレジェンドと呼ばれるにふさわしい方でした。ただ、話していくうちに、その一点の曇りもない表情、トラブルもユーモアに変えてしまう魔法みたいな明るさの裏側には、想像を絶するような悲しい体験があったことが分かりました。

 私は、短い期間に彼から多くのことを学びました。日本へ帰る前日のよく晴れた午後、ホテルの近くの路上で、彼はおもむろにYouTubeでヒッチコックのインタビュー映像を見せてくれました。「Q.幸せの定義は?」「A. クリアな地平線。恐れるものなど、本当は何もない。悲しみや怒り、後悔、ネガティブな感情も、クリアな地平線上に見渡すことができたとき、創造性が生まれる」。彼の割れたスマホ画面の中で、ヒッチコックはそのように語っていました。別れてホテルに戻ると、いっぺんに起きたあらゆる出来事が一気にフラッシュバック。日本から持って来ていた小さなシンセサイザーで短い歌を作って、保存しました。いつか発表できるように、磨き続けています。

■PICK UP !/ロンドンでひとりのときに聴いていた音楽
・Freetwood Mac「Everywhere」
宿泊先で窓をあけていたら、外から大音量でこの曲のイントロが。見てみると、ロードバイクに乗った大勢の人たちがパレード(のようなデモ?)をしていました。みんなすごく派手な格好をしていて、笑えました。この曲を一気に好きになりました。

・Chromatics「Shadow」
霧雨の多かったロンドンで、寂しげなこの曲が異様に心に染みました。Chromatics はアメリカの Italians Do ItBetterというレーベルから出ていて、他の所属アーティストのアンニュイなシンセポップもどれも素敵ですが、この楽曲は特別にお気に入りです。

■プロフィール
マイカ・ルブテ(Maika Loubté)
SW、トラックメーカー、DJ。日本人の母とフランス人の父の間に生まれ、10代まで日本・パリ・香港で過ごす。ポップスとエレクトロニクスを融合させたスタイルで、国内外で音楽活動を行う。2019年7月、アルバム『Closer』をリリース。agnès b.、Mercedes-Benz、STÜSSY WOMEN、Gapなどのブランドとのコラボレーションも行う。

■関連情報
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(c)marie claire style/selection, text, photo: Maika Loubté

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