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超越した存在感で世界を魅了するエマ・ストーンが挑んだ最新作

2007年に映画デビューを果たしたのち、『アメイジング・スパイダーマン』のヒロイン役で人気を博したエマ・ストーン。その後、世界的大ヒットを記録した『ラ・ラ・ランド』で賞レースを席巻すると、ハリウッドのトップスターとしての地位を確固たるものにした。誰もが新作を待ち望むなか、天才監督ヨルゴス・ランティモスと最強タッグを組んだ話題作『哀れなるものたち』がついに公開。壮大な傑作に立ち向かった思いを明かす。

エマ・ストーン
photo: ©Austin Hargrave/AUGUST/amanaimages

第80回ヴェネチア国際映画祭で最高賞となる「金獅子賞」、第81回ゴールデン・グローブ賞で作品賞と主演女優賞を受賞し、本年度アカデミー賞最有力候補との呼び声も高い『哀れなるものたち』。ギリシャが生んだ鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の最新作としても注目を集めているが、そのなかで超越した存在感を放っているのが自ら命を絶った不幸な女性ベラを演じた女優エマ・ストーンだ。劇中では、天才外科医によって“生まれたての女性”として奇跡的に蘇生したベラが自分の力で真の自由と平等を手に入れる姿が映し出されていく。エマは主演のみならず本作のプロデューサーも務めているが、この物語に惹かれた理由をこう語る。

「ヨルゴスがベラのことを説明してくれたとき、私たちはとても似ていると感じたし、彼女のような女性になることは刺激的だと思ったわ。ベラは女性に典型的な制約を強いる社会で育っていないから、自由に世界を探求することができる。セクシュアリティに関してさえも判断力や羞恥心がまったくなく、自分の目を通して世界をどのように受け止めているかがすべてなのよ。私たちは周りの人々が自分のことが好きかどうかを考えてしまうけれど、彼女はそんなこと気にしない。だから、いまでも私はベラを恋しく思い、彼女ならどうするかを時々考えるほどよ」

エマはベラのことを「精神的に幼くても、これまで演じたなかで最も進化した女性」とも話しているが、観客もベラの魅力には抗うことができないだろう。ランティモス監督もまた、その1人であると明かす。

エマ・ストーン 哀れなるものたち

「僕はただ彼女に恋をしてしまったんだ。そうなると、もっと聞きたい、もっと見たいという気持ちを止められない。だから『彼女は次に何をするつもりなのか?』『周囲のあらゆるものを彼女はどのように受け止めるのか?』『適合しない世界に彼女はどう反応するのか?』といったことが映画の軸になっていったんだ。彼女の存在は、映画の構成や創作を試みるうえで、とても興味深いものだったよ」

エマ・ストーン 哀れなるものたち

本作は同名小説に魅了されたランティモス監督が、2011年頃に原作者であるスコットランドの作家アラスター・グレイのもとを訪ねて映画化の許可をもらったところから始まっている。

「これまで読んだことのないような作品に僕は心を奪われたし、登場人物、テーマ、ユーモア、そして言葉の複雑さに惹かれたんだ。視覚的にも印象的でありつつ難解。読んだ直後から興奮してしまって、『なぜいままで誰も映画化しなかったんだろう』と考えたくらいだよ」

映画化しなかったのではなく、おそらく「難しすぎてできなかった」が正解ではないかと感じるほど、誰もが挑めるような作品ではない。ランティモス監督でさえも一時は企画が思うように進まなかった時期もあったというが、エマにとってもランティモス監督にとっても、さまざまな経験とキャリアを積んだいまこそがまさに“正しいタイミング”だったのではないだろうか。『女王陛下のお気に入り』でもタッグを組んだランティモス監督に対し、エマは惜しみない称賛の言葉を贈る。

エマ・ストーン 哀れなるものたち
鬼才ヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンほか、超豪華キャストが未体験の驚きで世界を満たす最新作。原作は、スコットランドの作家アラスター・グレイの傑作ゴシック奇譚『哀れなるものたち』。天才外科医によって蘇った若き女性ベラは、未知なる世界を知るため、大陸横断の冒険に出る。時代の偏見から解き放たれたベラは 、平等と解放を知り、 驚くべき成長を遂げていく

「私はヨルゴスと脚本のトニー・マクナマラのユーモアと心の傷を美しく撚り合わせる手法に、いつも尊敬の念を抱いているの。なぜなら、それが人生というものだと感じているからよ。あと、ヨルゴスは女性を理解しているだけでなく、女性を愛し、見事に語ることができる監督であるとも言えるわね。だから私はこの映画を作れるのはヨルゴスしかいなかったと思っているの。このレベルに達する作品にできる監督はほかにはいないと考えているほどよ。そんななかでこの役を演じるというのは、女性であること、そして勇敢で自由であることを解き放ち、受け入れることのように感じたわ」

そう語るエマも、ほかの女優がベラを演じることは不可能だろうと感じさせるほどの演技で他を圧倒。その様子を目の当たりにしたトニーは、「エマはコメディとドラマの両方に対して並外れた才能を持つ女優」と評している。事実、大人の女性でありながら子供の頭脳を持ち、セクシュアリティに自由奔放なベラほどの難役を大胆かつ繊細に表現できたのはエマだからこそと言っても過言ではない。

『ラ・ラ・ランド』に引き続き、2度目のアカデミー賞主演女優賞受賞の期待が高まっているエマ。作品を発表するたびに進化し続け、女優としてさらなる高みへと上り詰めていくエマの雄姿は、観る者の心を揺さぶり、忘れられない映画体験へと誘ってくれるはずだ。

エマ・ストーン 哀れなるものたち
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

これだけは見逃せない! 2023年下半期傑作映画

『哀れなるものたち』(原題:Poor Things
公開日: 1月26日(金)
監督: ヨルゴス・ランティモス
出演: エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、ジェロッド・カーマイケル、クリストファー・アボット、マーガレット・クアリー、ハンナ・シグラ他
配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト: https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings

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