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「怒り」をエネルギーに 「コム・デ・ギャルソン」のショー 

2024年秋冬パリ・ファッションウィークより現地リポート! ショーのテーマは「ANGER(怒り)」。川久保玲の怒りとは。そしてどのように表現されたのか。

会場は、元衣料品チェーンC&Aの大型店だった場所。コンクリートがむき出しになった廃虚のような空間で、ショーは始まった。流れるのは、ベートーベンのピアノソナタ第14番「月光」第3楽章。

ファーストルックは黒のトップスとスカート。ポンパドール風のヘッドピースは照明につきそうなほど。ドラマチックなピアノの調べを聞きながら、頭に浮かんだのはマリー・アントワネットだ。ただ、贅(ぜい)を尽くして、民衆に追い込まれていくマリー・アントワネットではない。ふと、民衆の先頭に立っていたのでは、と錯覚させるような。次々に登場するスタイルは見る人の心をざわつかせる。

モデルたちの動きも通常とは異なる。狭いランウェーで突然立ち止まったり、観客に迫っていったり。不意の動きに、観客は緊張し、何を表現しようとしているのかを考える。デフォルメされたパフスリーブやスカート、フリルやリボン、チェーンや有刺鉄線の柄。いずれも、私たちが考える「普通」とは異なり、強く、美しく見える。

コレクションノートには「昨今の心境をコレクションに込めました」と記されていた。「世界のあらゆることに対して、そして特に自分に対しての怒りも」と。川久保のクリエーションの源にはいつも怒りがある。なぜここで「怒り」と口にしたのか、推察することは可能だが、実際のところはわからない。だが、怒りはエネルギーだ。しかも衰えを知らないということは確かだ。

text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)

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