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モードをエコに!サステナブルラグジュアリーの先駆者「ステラ マッカートニー」

©Mary McCartney

今年でデビュー20周年を迎える「ステラ マッカートニー」。ブランド設立時から、ファッションのために動物や環境を犠牲にしないというスピリットを貫き、サステナビリティとハイファッションの両立を目指してきたパイオニアだ。

©Mary McCartney

元ビートルズのポール マッカートニーの娘、という装飾語は必要ないほど、すでに成功を収めているデザイナーのステラ マッカートニー。ベジタリアンだった亡き母の影響でステラも菜食主義を貫いている。それは仕事にも反映されていて、2001年に自身の名を冠したブランド「ステラ マッカートニー」をスタートさせた時からレザー、ファー、フェザーなど動物由来のマテリアルを一切使用していない。

彼女のポリシーは今に至るまで揺らぐことなく、ベジタリアン ラグジュアリーブランドという新しい分野を確立。“サステナビリティ”の概念が一般的になるずっと前から、動物、自然、そして地球のためにファッションを通してできることを追求し、進化を遂げてきた。“責任を持ち、誠実で、現代的な会社であること”をブランドの信念とし、服作りから、店舗やオフィスの開設、運営まで、可能な限り地球環境に配慮した方法で取り組んでいる。

©Mary McCartney

2008年にいち早くオーガニックコットンを採用し、2010年には有害なPVC素材の使用をやめている。デビューしてからの20年間は、オーガニック素材や再生可能素材といったエコフレンドリーなマテリアルを創造し続けるチャレンジの歴史でもあった。さまざまな素材メーカーと共同で、サステナブルなマテリアルを開発し、循環型ファッションの実現のために邁進。2021年ウィンターコレクションでは、エコフレンドリー素材が占める割合は77%までに拡大した。

さらには、物作りに携わる人たちの労働状況改善のための活動にも着手。すべての働き手が搾取や差別なく、公正な環境下で自由かつ安全に仕事ができるように活動している任意団体「ETI」にも加盟するなど、より奥行きのあるビジョンでサステナビリティにアプローチしている。

ステラ マッカートニーは、動物、自然、環境、人道といった多面的な事柄に向き合い、デザイン性が高く、時代のムードを捉えたラグジュアリーアイテムを生み出す類い稀なるデザイナーだ。そんな彼女は、これからもエコとモードを両輪にして、未来へとさらに突き進んでいく。

「ステラ マッカートニー」と
サステナビリティの20年の歩み

Vegetarian Leather
since 2001

徹底してリアルレザーを使わないステラが用いるベジタリアンレザーは動物皮革に比べ、環境負荷が24倍も低いとされている。さらに人体や環境に悪影響となる有機溶剤不使用の水系ポリウレタンやオルタースエードを採用。天然資源が原料のサステナブルな合成物質を取り入れ、継続的な物作りを展開。バッグ〈左から〉[W40×H 31.5×D15]¥106,700 [W23 ×H17×D11]¥122,000(ともにステラ マッカートニー/ステラ マッカートニー カスタマーサービス)

Fur Free
since 2001

動物を犠牲にしないファーフリー素材を採用。2019年にはコレクションの一部に、世界に先駆けて植物由来原料で作られたサステナブルなバイオファーフリー素材「KOBA®」ファー フリー ファーの導入も開始。この画期的な新素材には再生ポリエステルが含まれていて、寿命を終えた後、廃棄することなくリサイクル可能な循環型ファッションループを実現させた。アウター¥ 291,500 バッグ[W36×H24× D20]¥171,600(ともにステラ マッカートニー/ステラ マッカートニー カスタマーサービス)

Organic Cotton
since 2008

効率よく水を使うだけでなく、有害な化学物質の使用を避けることで、土壌を健全に保つことができるオーガニックコットン。それは環境だけでなく、社会的にも意義があるものとステラは捉える。2008年に使用を開始し、2020年サマ ーコレクションより、デニムは100 %オーガニックコットンに切り替わ っている。トップス¥40,700(ステラ マッカートニー/ステラ マッカートニー カスタマーサービス)

Regenerated Cashmere
since 2016

カシミアは、自然素材の中でも環境への大きな影響力を持つ素材の一つ。昨今、手頃な価格で大量生産されているカシミア製品の需要増加に伴い、カシミアヤギの頭数も増加。それはモンゴル草原の破壊にも繫がっている。それを踏まえ、ステラはヴァージンカシミアの使用を中止。その代用として、イタリアで生産時に出る繊維廃棄物を再生したカシミアを採用している。セーター¥99,000(ステラ マ ッカートニー/ステラ マッカートニ ー カスタマーサービス)

Loop Sneakers
since 2018

接着剤の使用削減を目指し、18ヵ月以上をかけて製作されたサステナブルな一足。毒性のある従来の接着剤を使わず素材を接合する革新的な設計と特殊なステッチで作られているので、各パーツが分解でき、リサイクルが可能な〝循環する〞スニーカー。動物に優しいウ ォーターベースの接着剤を用いることで廃棄物質から生じる水や土壌の汚染にもアプローチ。スニーカー[H4]¥70,400(ステラ マッカートニー/ステラ マッカートニー カスタマーサービス)

ブランドの価値とビジョンを再定義する
「マッカートニー A to Z マニフェスト」

ブランドと深い繫がりをもつ世界各国の創造力溢れるアーティストたちが“A to Z”のキーワードを作品に。 B is for British -ブリティッシュ(ピーター ブレイク、イギリス)DAZZLE ALPHABET, LETTER B, 2017©PETER BLAKE
S is for Sustaina bility – サステナビリティ(空山基、日本)UNTITLED_S, 2020© HAJIME SORAYAMA

2021年スプリング、デビュー20周年に合わせて、改めてブランドの価値とビジョンを再定義する「マッカートニー A to Z マニフェスト」が発表された。AからZまでの26文字のアルファベットが頭文字になったキーワードをセレクト。その言葉を、世界各国で活躍するアーティストたちによる作品と結びつけた視覚的なアプローチを行った。アーティストたちの唯一無二の視点とブランドの倫理観や美学が交錯するユニークな試みだ。アーティストはファミリー同然である、というブランドのもとにジェフ クーンズやサム テイラー ジョンソンなど著名な芸術家らとともに、日本からは、空山基も参加している。

A is for Accountable – 説明責任(ラッシード ジョンソン、アメリカ)ACCOUNTABILITY, 2020© RASHID JOHNSON

「マッカートニー A to Z マニフェストは、ロンドンでのロックダウンの初期に生まれました。少し立ち止まり、本当に重要なことは何かを考える時間があり、そこで私たちがファッションにおいて愛し、知り、信じていることを定義するものは何かを言葉で表現しました」とステラ。2021年スプリングのレディトゥウェアコレクションより、素材の調達方法から衣類の製造方法、コミュニケーション方法に至るまで、ブランドのあらゆる方針は、このマニフェストがベースになる。「このマニフェストには、私たちの環境意識や、これまで学んできたこと、実現してきたこと、そしてこれから実現していくパートナーシップや変化、さらに日々、目指し続ける目標など、すべてが反映されています」


2021 Autumn Campaign -Our time has come-
喜びとともに讃えたい!
動物と人間がイコールになる世界 

2021年オータムコレクションの着想源は、「マッカートニー A to Z マニフェスト」の“J is for Joy(喜び)”。ロンドンの街を舞台に、さまざまな動物の喜び溢れる姿をポジティブで色鮮やかな世界観で描き出す。撮影は、世界的に活躍するフォトグラファー、マート&マーカスが担当した。このユーモア溢れるキャンペーンのムービーは、「ヒューメイン ソサエティー インターナショナル(HSI)」が取り組むファーフリーの社会を目指す署名活動をサポートしている。

ステラ マッカートニー
1971年、イギリス生まれ。父は元ビートルズのポール マッカートニー。95年にロンドンのセントラル セント マーチンズを卒業し、97年には「クロエ」のクリエイティブ ディレクターに就任。2001年10月にパリで自らのブランドのコレクションを初披露する。幼い頃からベジタリアンで、4人の子供を育てる母親でもある。

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©︎marie claire/photos: © STELLA McCARTNEY / text: Tomoko Kawakami

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