「ヴァシュロン・コンスタンタン」の“One of Not Many”キャンペーン　新しい顔は芸術家のザリア・フォーマン

1755年の創業以来、伝統とクラフトマンシップの継承に注力してきたスイス生まれの「ヴァシュロン・コンスタンタン」は、世界最古の高級時計マニュファクチュールだ。そのメゾンが2018年に始めたキャンペーン“One of Not Many”（少数精鋭の一員）とは、メゾンが大切にする価値観や世界観を共有し、それを体現する人物に焦点を当てたもの。音楽家やデザイナーなど、各界で活躍する人を起用し、注目を集めている。

そんな中、新たに“One of Not Many”キャンペーンの一員に選ばれたのが米国人の芸術家のザリア・フォーマン。旅の精神を表現する「オーヴァーシーズ」コレクションの新たな顔となった彼女は、15年以上にわたり、世界有数の遠隔の地を旅し、変わりゆく風景の影響を記録。そのイメージや記憶を収集し、壮大なパステルで再現した作品は、世界中の美術館で展示されている。

また、社会貢献活動にも熱心なザリアは2016年から、NASAが行った南極大陸、グリーンランド、カナダの北極圏の上空で行う飛行調査にも数回同行。この調査結果は、過去10年にわたる地球上の氷の変動地図の製作に大きく貢献している。そして彼女は、この経験を題材にし、地球の美しさと儚さを描く荘厳な作品を創作した。

Interview

残された氷河の中に生き続ける歴史のプリズムを通して、未来について考えてもらいたい──── ザリア・フォーマン

「ヴァシュロン・コンスタンタン」は、価値や技能の伝承への取り組みを大切にしています。この哲学は、あなた自身の感性や芸術的アプローチにも通じるものですか？

もちろんです。感情を掻き立て、自然界への立証をし、細部へのこだわりと美しさへの配慮、これらは「ヴァシュロン・コンスタンタン」を私が賞讃する理由です。このメゾン、そして私自身の仕事においても、時間は重要な要素です。氷河が大きくなるための莫大な時間、氷山の端から差しはじめる太陽の光を感じる瞬間、それを写真に収める一瞬、作品を細部まで完成させるために私が費やす数カ月、氷がとけるまでの時間、そして気候変動の最悪な影響を軽減するために私たちに残された時間などです。

残された氷河の中に生き続ける歴史のプリズムを通して、私の作品を見る人たちに未来について考えてもらいたい。「ヴァシュロン・コンスタンタン」がメゾンの職人、専門技能、時計製造における偉大な遺産や文化について行っているように、私も美しいモノを守るための一助を担いたい。私たちは共に、創造と保存を行っているのです。

「オーヴァーシーズ」コレクションは、探検と世界へ開けた扉を表現しています。今回の作品「フェルスフェアラ、アイスランド」では何を表現しようと思いましたか？　

芸術家としての私の目的は、訪れる機会のないような隔絶の地を経験する機会を作品を見る人に与えること。その場所に対する畏敬の念を感じることにより、そこを守りたいという思いに繋がると信じています。この様な湧き上がる感情を経験した後、持続可能な行動に向け、どのような道をたどることができるのか？ 芸術家として私たちは、どのように人々に行動を促すことができるのか？ を自問します。

過去15年以上、私は氷がとけ、海面が上昇している地域を訪れ、紙の上のパステル画を通して気候危機の緊急性を伝え続けてきました。変わりゆく風景を目の当たりにする中で、私は常に畏れの念を持たずにはいられないし、それを忠実に表現したかった。氷のもろさは、「オーヴァーシーズ」の時計の信頼性とは相反しますが、これらは共に時を伝え、それぞれの複雑さ、卓越性、美しさを兼ね備えている点は共通しています。

“One of Not Many” (少数精鋭の一員)

2018年にスタートした“One of Not Many”キャンペーンは、その個性と作品がヴァシュロン・コンスタンタンを特徴づける卓越性、世界へ開かれたオープンな姿勢、革新と創造の精神を表する、才能あるアーティストを通してメッセージを打ち出している。音楽家のベンジャミン・クレメンタイン、デザイナーのオラ・イト、写真家で探検家のコーリー・リチャーズ、そしてオートクチュール クリエイターのイーキン・インが広告塔を務めている。