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ピカソの模写300点!ポップアートの巨匠、田名網敬一が個展を開催。その思いを語る

模写は写経と同じような感覚。少しずつオリジナリティーを加えていく

ピカソの模写作品と田名網敬一

最初はピカソの複製の写真を見ながら、その通りに描いてみる。そのうち同じように描くのは面白くないなと思い、色をちょっと変えてみたり、ピカソの二つの作品を1枚に合成して描いてみたり、少しずつ僕のオリジナルを加えてみる。なんとなく、写経のような感覚です。

たとえば、ピカソの母子像はお母さんが子どもを抱っこしてる作品だけど、その子どもを全く違うピカソの絵から持ってきて、あて込むとかね。そういう、コラージュしたものを描いていました。

さらに制作活動が進んでいくと、自分の想像でピカソの絵を描くようになりました。想像といっても長い間ピカソの模写を描いているから、描き方のテクニックはわかっている。変な話、ピカソを知っている人にとってはピカソには見えないけれど、知らない人にとってはピカソに見えるような絵を描いて楽しんでいましたね。

脳内は毎日変化しているわけだから、同じアーティストの作品を描いていても飽きるってことはないわけです。

ピカソの絵に取りつかれている。どんどんのめり込む日々

なぜ、ピカソの絵が飽きないのか? もちろんピカソの絵が好きだからです。いや、取りつかれているのかもしれないね。

たとえば仮にゴッホの絵を僕が描こうとしても、2、3枚描いたらきっと飽きちゃうと思う。麦畑を描こうが、人物を描こうが、ゴッホのスタイルがわかってしまうから何度か模写をしただけで飽きちゃう。だけど、ピカソは、“創造と破壊”というテクニックを使う。創造して破壊する、絶えずそれを繰り返すことを生涯貫いたのがピカソという人。そこに、僕は大きな魅力を感じているんです。

NANZUKA UNDERGROUND 2階に展示されている田名網氏によるポップアート作品

コロナ禍で戸惑う田名網を救った一筋の光。それは、埃(ほこり)をかぶっていたピカソの模写だった。彼の人生に彩りを与え、今回の個展のために仕上げたエネルギーあふれる作品が、原宿の「NANZUKA UNDERGROUND」 に集結。ピカソのシリーズ約300点の展示と、移動式販売スタンド(Kiosk)を模したインスタレーションを中心に展開中。

また、「NANZUKA UNDERGROUND」2Fと中目黒のギャラリー「3110NZ by LDH kitchen」では、膨大なイメージの蓄積から生み出される新作のキャンバスペインティング、コラージュ作品、そして最新のアニメーション作品「赤い陰影」を展示中。田名網作品が一堂にそろうこの機会をお見逃しなく。

・世界を映す鏡A Mirror of the World
会期:2022 年11 月12 日(土)- 12 月25 日(日)
場所:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区神宮前 3-30-10
時間:火曜日 – 日曜日 11:00-19:00*月曜、祝日休業
入場料無料

・世界を映す鏡A Mirror of the World(chap.2)
会期:2022 年11 月15 日(火) 2022 年12 月24(土)
場所:3110NZ by LDH kitchen
住所:東京都目黒区青葉台 1-18-7
時間:火曜日 – 木曜日 11:00-16:00, 金曜日 – 土曜日 11:00-17:00*日曜、月曜、祝日休業
入場料無料

Interview & text: Miyuki Kikuchi

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関連情報

Profile

田名網敬一

1936年 東京都生まれ
1958年 武蔵野美術大学卒業
1975年 月刊「プレイボーイ」誌 アートディレクター就任
1991年 京都造形大学大学院 情報デザイン学科 教授
2016年 京都造形大学大学院 芸術研究科 教授
現在、東京都にて活動中

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