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ジブリ鈴木敏夫さんが見据える、メディアの本質と未来像

能楽堂の舞台で、鈴木さん(左)が様々なエピソードを披露した

これからのメディアはどうあるべきか――。株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さんと『マリ・クレール』副編集長の高橋直彦が、「メディアたちはどう生きるか」をテーマに、11月に開園したジブリパークから新聞の果たす役割まで幅広い話題で語り合いました。

「メディアたちはどう生きるか」をテーマとした株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さんをお迎えした対談は、「The Yomiuri Executive Salon 2022」のメインイベントとして、2022年11月7日に東京・渋谷の能楽堂で行われました。

高橋直彦(以下、高橋) 11月1日に愛知県長久手市にジブリパークが開園し、大きな話題になっています。

鈴木敏夫(以下、鈴木) おかげさまで多くの方から好評をいただきうれしく思います。ただ大事なのは、期待を持って来ていただいたお客さまに、いかにもう一度足を運んでもらえるかだと思っています。

ジブリパークの目印となるのがエレベーター塔(撮影・高橋直彦)

高橋 私も拝見しましたが、「ジブリの大倉庫」というのがメイン会場にあり、「青春の丘」には映画「耳をすませば」の「地球屋」が再現され、さらに「どんどこ森」には「サツキとメイの家」があって、その裏山の頂上に「どんどこ堂」があります。今後は2023年に「もののけの里」ができて、2024年には「魔女の谷」ができる予定だそうですね。

『となりのトトロ」の世界を楽しめるどんどこ森。裏山の頂上にはどんどこ堂があり、子どもだけが中に入れる(撮影・高橋直彦)

鈴木 そうですね。私自身、楽しみにしています。海外だとロンドンにはハイド・パークがありニューヨークにはセントラル・パークがあって、都会の真ん中に公園があるというのが少しうらやましかった。さすがに名古屋の真ん中ではできませんでしたが。

高橋 「ジブリの大倉庫」にはこれまで展示したものを保管する「公開倉庫」もあって面白いですね。いま美術館でもそういう流れがあり、ニューヨークのブルックリン美術館が一部の収蔵庫を見せています。日本でも2024年に宮城県美術館がガラス張りの収蔵庫を設ける予定です。

鈴木 これまでいろいろな展覧会をしてきたので、ジブリパークに入れたい展示品がいっぱいあり、あっという間に「ジブリの大倉庫」は満杯になってしまいました。今回のジブリパークを作った宮崎吾朗に「勝手に使わないでよ、全部」と文句を言われています(笑)。

愛知県美術館で12月25日まで開かれている「ジブリパークとジブリ展」では、パーク開設の舞台裏も紹介(撮影・高橋直彦)

高橋 2005年の愛・地球博に建築された「サツキとメイの家」が、経年変化してそのままあるのもすごいと思いました。家の中もタンスから父親の書斎まで全部再現されて、自由に触れられるの楽しいですね

鈴木 ジブリ美術館を作る時に、専門家に意見を聞いたところ、どこもかしも作品に触れてはいけない。だか触ることが出来たら面白いのではないかという考えがありました。作品を作家のものとして扱い、そして触ることができる。これをジブリ美術館の特長の一つにしようと考えました。その考えはジブリパークにも受け継がれています。

Profile

鈴木敏夫(すずき・としお)

株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。1948年、名古屋市生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、徳間書店入社。『アニメージュ』の創刊に参加し、副編集長、編集長を務めるかたわら、高畑勲・宮崎駿作品の製作に関わる。85年にスタジオジブリの設立に参加、89年からスタジオジブリ専従。以後ほぼすべての劇場作品をプロデュースする。

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