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鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」【エスプレッソが市民権を得るまで】

イラスト◎岸リューリ

マシンがあったのは小川軒ほか数軒

同じことが日本についてもいえる。70年代の後半でもエスプレッソは、まだほとんどその存在が知られていなかった。東京でもエスプレッソ・マシンを備えているところは新橋の小川軒ほか数えるほどだった。フランス料理店やイタリア料理店でエスプレッソと注文しても、ウェイターはその名前すら知らなかった。新宿の高野にイタリアから輸入されたエスプレッソ風のインスタント・コーヒーがあるというので喜んで買い求めた記憶がある。

ところが、それから数年しかたたないうちに、立ち飲みのエスプレッソ・コーヒー・チェーンが現われ、エスプレッソはたちまちのうちに市民権を獲得した。

まさにその名(express=急行)の通り、すばやい普及であったというほかない。

【グリの追伸】どちらも茶色をバックにした写真ですが、本当に、この家は、本がないところは全部この色で、ほかに選択肢がないのです。ごめんなさい。

撮影ウラ話でした

photos by Shigeru Kashima

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Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年~20年明治大学国際日本学部教授。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞ほか受賞歴多数。現在、書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰

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