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鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」【イギリスに紅茶、フランスにコーヒーが根付いた理由】

9月も後半、紅茶やコーヒーが美味しい季節の始まりです。紅茶が有名な国といえばイギリス、一方フランスでは紅茶よりも断然コーヒーが好まれます。その違いはどこから生まれたのでしょうか。フランス文学者の鹿島茂さんが愛猫のグリ(シャルトリュー 10歳・♀)とともに、海外ルーツのモノやコトについて語ります。(本記事は鹿島茂:著『クロワッサンとベレー帽 ふらんすモノ語り』(中公文庫)から抜粋し作成しています)

こだわり方がまったく違う

英仏のあいだに横たわるドーヴァー海峡は、狭そうで案外幅のある海峡なのかもしれない。海峡一つ隔(へだ)てただけで、かくもことなるものかと驚くような習慣が多くあるからだ。紅茶などはそのよい例である。

フランスのカフェやレストランでは、紅茶はレモン・ティーかミルク・ティーの別のみで、ダージリンとかセイロンとかアッサムなどという葉の区別というものがほとんどない。相当に高級なレストランでも、安紅茶のティー・バッグをティー・ポットに入れたものを平気で持ってくる。一般家庭でも、ティー・タイムなどというものは存在しない。

しかも、紅茶の淹(い)れ方もいたって無神経で、渋すぎたり、反対にひどく薄かったりする。お湯の温度や葉の分量に気を使うイギリス人とはえらいちがいである。

おそらく、紅茶に関するこうした英仏のちがいは18世紀の七年戦争〔1756-1763〕に端を発しているのだろう。

フランスはイギリスと競争してインドの植民地化を推し進めたが、七年戦争の敗北でインド権益のほとんどを失った。

その結果、インドと極東でしか取れない紅茶はフランスに入ってこなくなったのに対し、仏領西インド諸島でプランテーション開発が進んだコーヒーはフランスに大量に輸入されて、カフェ文化を開花させた。

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Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰。

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