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鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」【セーラー服は男の子のおしゃれ着だった】

耳にご注目ください

9月に入り、新学期とともに制服姿の中高生を目にすることも多くなりました。制服の代表的なタイプと言えばセーラー服ですが、あの特徴的な衿のデザインの始まりとは──? 仏文学者であり、その博覧強記ぶりでも知られる鹿島茂さんが愛猫グリ(シャルトリュー 10歳・♀)と、今では私たちの生活にすっかり溶け込んでいる海外ルーツのモノやコトについて語ります(本記事は鹿島茂:著『クロワッサンとベレー帽 ふらんすモノ語り』(中公文庫)から抜粋し作成しています)

『ベニスに死す』の美少年タジオも着用

セーラー服といえば、日本では昔から女学生の制服と相場が決まっていた。

ところが、ヨーロッパでは、映画『ベニスに死す』で、アッシェンバッハが恋する美少年がセーラー服を着ていたことからもわかるように、むしろ男の子のおしゃれ着として1900年前後に流行した。

もちろん、女の子でもセーラー服を着ている子供はいたが、当時のデパートの通販カタログなどで調べたかぎりでは、圧倒的に男の子用のものが多い。

日本では、なぜこれが女学校の制服になってしまったのだろう。どなたかご存じの方がいらしたらご教示を願いたいところである。

それはそうと、このセーラー服、その名のとおり、水兵や水夫(セーラー)の制服をまねて作ったものだが、では、セーラー・カラーはなぜあのような特殊なかたちをしているのかというと、これには諸説があってはっきりしない。

その一つは、あの襟だと、船が沈没したときに服を脱ぎやすいというものだが、果たしてそうだろうか。私などには、逆に脱ぎにくそうに見えるのだが。

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Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰。

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