『魔法のリノベ』の金子大地。若者の葛藤や不安をにじませ、役柄に人間味を与える注目の俳優
2022.7.18
2022.7.18
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そんな金子が2021年に出演した映画が『先生、私の隣に座っていただけませんか?』である。次世代の映画クリエイター発掘を目的としたコンペティション「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2018」で準グランプリを獲得した企画を下敷きに、“不倫”がきっかけで、漫画家夫妻の間で渦巻く虚実織り交ぜての心理戦を、スリリングかつユーモラスに描かれた本作。黒木華、柄本佑、奈緒、風吹ジュンという演技も個性も光る俳優揃いの中で、金子も存在感を示している。
妻の早川佐和子(黒木)は売れっ子漫画家。夫の俊夫(柄本)も漫画家だがスランプ状態で、佐和子のアシスタントに甘んじていた。ある日、俊夫は佐和子が描き始めた新作漫画の下絵を盗み見て驚く。登場人物は自分たちそっくりの夫婦で、つい最近の出来事がそのまま描かれていたからだ。しかも、作中の夫は妻の担当編集者と不倫をしているではないか。事実、佐和子の担当編集者・桜田千佳(奈緒)と不倫中の俊夫は、「バレたかもしれない!」と精神的に追い詰められていく。
さらに漫画の回が進むと、主人公の女性漫画家と、彼女が通う自動車教習所の若い教官との恋愛物語が描かれるのだが、確かに佐和子は教習所に足繁く通っている。この漫画は創作なのか、それとも俊夫に対する佐和子の復讐なのか。不安と嫉妬で混乱する俊夫は、やがて現実と虚構の間に迷い込んでいく……。
金子が扮するのは、佐和子が通う自動車教習所の教官・新谷歩。登場シーンでは、他の作品で見せるクセの強さを封印して、漫画ならヒロインがひと目惚れしそうな爽やかで堅そうな青年になりきっている。
歩はストーリーが進むにつれて佐和子に巻き込まれていくのだが、こういう受け身なお人好し青年ってリアルにいそう。見る側にそんなふうに思わせるところが、金子大地の力量であり魅力なのかもしれない。
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香月友里
かづき ゆり フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る
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