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七月の歌舞伎座は青田買い必至の御曹司たちが勢ぞろい

(右より)歌舞伎座「七月大歌舞伎」第一部『當世流小栗判官』の市川猿之助、第二部『夏祭浪花鑑』の市川海老蔵、第三部『風の谷のナウシカ』の尾上菊之助

現在、歌舞伎座で上演中の「七月大歌舞伎」は、いつにも増してトピックが多い。上演されれば必ず注目される人気演目揃いだからということもあるけれど、もうひとつ理由がある。それは、将来の歌舞伎界を背負って立ち、さらにジャンルを超えた活躍が期待される幼い御曹司たちが大勢出演するからだ。

幼子たちの成長を見つめる楽しみ

歌舞伎鑑賞は、長い人生をかけて磨き上げられた役者の芸を堪能できるのが醍醐味なのだが、歌舞伎役者の家に生まれた子が、まだあどけない幼子の頃から舞台に立ち、芸を身につけ成長していく様を、“親目線”で見守るのも楽しみである。そういう意味で、歌舞伎にあまり馴染みはないけど興味がある、という人にとって、「七月大歌舞伎」はまたとない入り口かもしれない。

寺嶋眞秀 市川猿之助がその才能に注目して起用

第一部で上演されるのは『當世流小栗判官』。智勇に優れた小栗判官と、将軍家の命により許嫁となった常陸国の領主の娘・照手姫の物語だ。国の横領を企む横山大膳の計略により離れ離れになったふたりを軸に、ロマンと波乱に富んだ物語が展開する。小栗判官(市川猿之助)と照手姫(市川笑也)による天馬に乗っての宙乗りなど、エンタメ度の高い見どころが満載だ。

第一部『當世流小栗判官』左より、小栗判官=市川猿之助、照手姫=市川笑也

この演目に出演しているのが、遊行上人の弟子・一真役の寺嶋眞秀(てらじま まほろ)である。

眞秀くんは2012年9月生まれの現在9歳。母は女優の寺島しのぶで、祖父は七代目尾上菊五郎。同じく七月大歌舞伎第三部『風の谷のナウシカ』に出演する尾上菊之助は叔父で、尾上丑之助と寺嶋知世はいとこである。父はフランス人で、日英仏の三カ国語をこなすトリリンガルだ。

第一部『當世流小栗判官』(手前)遊行上人弟子一眞=寺嶋眞秀、(奥)小栗判官=市川猿之助

2017年、4歳のときに「團菊祭五月大歌舞伎」で初お目見得した眞秀くんは、歌舞伎はもちろん、映画『ソニック・ザ・ムービー』(2020年)で日本語吹き替えに挑戦し、7月からはテレビドラマ『ユニコーンに乗って』(TBS)にも出演している。

音羽屋(尾上菊五郎家の屋号)のひとりである眞秀くんを、一真役に起用したのは四代目市川猿之助だ。キャスティングの理由について猿之助は、「血のつながりがないので、純粋に才能を見て、ぜひと思いました。芸勘や音感がいい彼には、舞台が楽しい、という経験をしてもらいたい」と語っている。

寺嶋眞秀

これまでも若手歌舞伎役者を続々と登用し、大きな役を振って盛り立てている猿之助に才能を見出された眞秀くん。どんな芝居を見せてくれるか楽しみだ。

【七月大歌舞伎】
●公演期間:~7月29日(金)
●劇場:歌舞伎座(東京都中央区銀座4丁目12−15)
●上演時間:第一部 午前11時~/第二部 午後2時40分~/第三部 午後6時30分~
※開場は開演の40分前を予定
【休演】11日(月)、20日(水)
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Profile

香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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