イヴ・サンローランの大回顧展を観る
2023.10.26

「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」会場
マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。国立新美術館で12月11日まで開催されている「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」は ファッションに関心のある人には必見。ファッションの全ての要素を改めて感じ取ることができる展覧会だ。
2023.10.26
「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」会場
マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。国立新美術館で12月11日まで開催されている「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」は ファッションに関心のある人には必見。ファッションの全ての要素を改めて感じ取ることができる展覧会だ。
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国立新美術館で9月20日から12月11日まで開催されている「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル(Yves Saint Laurent, Across the style)」では、2002年の引退までの間、約半世紀にわたって世界のファッション界をリードしてきた不世出のファッション・デザイナー、イヴ・サンローランの代表作が展示されている、没後日本で初めて開催される大回顧展です。
代表作の中にはピーコート、トレンチコート、サファリ・ジャケットといった、今では女性のワードローブの定番ともいえるものも含め110体が展示され、それ以外にもアクセサリーやドローイング、写真など約300点の展示品が、イヴ・サンローランのファッション界における偉大な足跡を、改めて感じさせてくれます。
私がイヴ・サンローランに強く興味を持つようになったのは、1970年代の初頭、イタリアのメンズ誌「L’UOMO VOGUE」でサンローランの最初のメンズコレクションが発表された時でした。それまで日本ではアメリカン・トラッドがメンズファッションの主流で定番でしたが、サンローランのメンズコレクションは色彩豊かで、またディテールにも細心の注意が払われ、とてもエレガンスを感じさせるものでした。当時青山通りと銀杏並木の交差点の近くにあった、コンクリートのうちっぱなしの外観と旅客機コンコルドをデザインしたイザベル・エベのインテリアがユニークな「サンローラン リヴ・ゴーシュ」東京店へ早速見に行ったのを覚えています。
もちろん私にとってはとても高額ではあったのですが、どうしても着てみたくて、シャツやニット類、別珍のジャケット、靴などを購入し、また購入予定がなくても、よく東京店にサンローランの服を見に通ったものです。
サンローランは映画や、舞台の衣装も数多く手掛けています。パリ・オペラ座のバレエダンサーからミュージカル映画やレヴューの世界に転出したジジ・ジャンメールの舞台衣装も手掛けています。またケッセルの小説を映画化したルイス・ブニュエル監督の作品『昼顔』でカトリーヌ・ドヌーヴが着用した衣装、トレンチコートや白い襟の付いたブラックドレスなどはサンローランの作品です。サンローランの才能を高く評価し、自らも着用していたドヌーヴは、監督に映画の衣装をサンローランに任せるよう進言したそうです。
サンローラン好きが高じて、中央公論新社で『marie claire』を編集していた時には表紙からサンローランの特集号を作り、また『marie claire』の男性版『marie claire style monsieur』を作った時(2017年8月24日号)は表紙をイヴ・サンローラン自身の写真にし、また中面でも彼の服を取り上げました。さらにはサンローランのパートナーであったピエール・ベルジェ氏の著作「イヴ・サンローランへの手紙」の翻訳版も中央公論新社で発行させていただきました。この本はパリのピエール・ベルジェ・イヴ・サンローラン財団で販売されている唯一の日本語の書籍です。
残念ながらイヴ・サンローランもピエール・ベルジェも今は故人となってしまいましたが、ブランドは続いています。
2024年春夏パリ・ファッションウィーク初日の9月26日現地時間午後8時、エッフェル塔のネオンが星のように輝くタイミングに合わせ、「サンローラン」のファッション・ショーが始まりました。現在のデザイナーであるアンソニー・バカレロによって現代風に解釈された「サンローラン」。その繊細で美しいシルエットは、十分にサンローランの遺伝子を感じさせるものでした。
2023年10月26日
【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】
©︎marie claire
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