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料理家の室田 HAAS 万央里さん「人生は変えられる」 パリから長野へと移住した今が転機

人生は変えることができる

室田HAAS万央里, バラック食堂,料理家

17歳からニューヨーク、バリ島、パリ、そして今長野へと移住。これまでの人生を振り返り、転機になったのはいつかと尋ねると、「今かも」と返ってきた。

「大人になってから日本にちゃんと住んだことがなかったので、こんなに楽しいんだ!と思っているところです。ずっと海外で暮らして、母国語以外でコミュニケーションをとっていたので、いつも『だいたい自分の言葉は通じないだろう』というのが前提にあったので。今はそこへのエネルギーを使わなくなった分、他に集中できていいですね」

あとはやっぱり……、とこう続けた。

「自分の人生を変えることができるんだなって思いましたね。私は東京育ちなのですが、祖母が、となりのトトロのアニメに出てくるような福岡の田舎にいて、学校が休みになるたびに祖母の家で過ごしていたんです。彼女に教えてもらいながらよもぎをつみ、たけのこを掘りにいき、夏は縁側でとうもろこしをかじり、季節の移り変わりを肌で感じながら田舎暮らしを楽しみました。

その思い出があったので、いつか田舎で暮らしたいと考えていたのですが、今まさにできているから。移住してきたばかりで冬に温かい服がないだろうからと近所のおばあちゃんにお下がりをいただいたり、栗の季節には栗ご飯をいただいたりといつも気にかけてもらって、ここは人がすごく温かいです」

人生のステージの変化といったことは意識せず、ゆるりと流れにのってきた。そして再び今、料理を作って提供する側に立つ。ただし、以前とは少し違う。

「以前は、料理に使っている野菜の生産者は知らなかったのですが、今は農家さんたちの顔も知っているし、畑にも行っています。バラック食堂や料理教室のメニューは、前日に決めるんですね。それは季節に合わせて、どんな野菜が来るかわからないので。それって本来、とても自然な流れなんだと思うんです。冬でもトマトを買おうと思えばスーパーで買えますが、そうではなく、『今あるものでおいしいものを作りたい』『地元の食材でできたら、もっといいよね』という楽しさに気づいたんです」

ただ美味しいものを食べてもらうだけでなく、「生産者や作り手という『人』がいることをお客さんに感じてもらいたい」と室田さん。さらに春になったら自分たちで野菜作りも始めたいと目を輝かせる。

料理を振る舞うだけでなく、休みの日には家族ときのこ狩りに行ったり、教習所に通ったりと黒姫での生活を謳歌(おうか)中。暮らすことを楽しむ、シンプルで飾らない室田さんが人生で大切にしていることは――。

「こだわらないこと、です。自分はこうであったらいいなという理想があればあるほど、物事に対してしんどくなってしまうから。だから『こうあるべき』ではなく、『楽しいことを大事に』。何かを伝えたい時、美味しいものや楽しいことは、すっと人の心に入りやすいと思っています。

バラック食堂で地元の野菜を使ったプラントベースの食事を提供することで、こんなに美味しい食材を心を込めて作っている人たちがいるということ、プラントベースだけで満たされる食事ができるということを、この場所に来てくれた方に楽しみながら知ってもらえたらうれしいです」

photo, interview & text: Tomoko Komiyama

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Profile

室田 HAAS 万央里(ムロタ ハース マオリ)

東京生まれ。17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て2003年に渡仏。モード界で働いた後、ケータリング業に転身、料理教室や出張料理をパリで行う。現在は主にオンラインでのヴィーガン料理教室、レシピ本執筆、企業へのレシピコンサルティングなどを手がける。ハム好きな4歳の娘、ほぼベジタリアンな夫と暮らしながら「みんなが喜ぶヴィーガン料理」をインスタグラムで発信している。2019〜2021年、朝日新聞デジタル&W で「パリの外国ごはん そのあとで。」を連載。著書に「パリの菜食生活 ふだんづかいのヴィーガン・レシピ」(青幻舎)、「Tokyo Les recettes culte」「Cuisine Japonaise maison」(ともにフランス、Marabout 社)がある。 インスタグラム:@maorimurota

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