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ジブリ鈴木敏夫さんが見据える、メディアの本質と未来像

■メディアの本質は真実を書くこと

数々の名作をプロデュースしてきた鈴木さんならではの貴重な発言に多くの人が耳を傾けた

高橋 今回のテーマである「メディアたちはどう生きるか」ということについてもお話を伺いたいのですが、鈴木さんのこの夏の鈴木さんの企画展で、過去の映画の新聞広告紙面をずらりと並べている展示があって、僕らのような新聞の人間はとても興味深く拝見しました。いま、SNSやデジタルメディアがさまざまに出ている中で、あえて新聞がメディアとして持つ役割というのを鈴木さんはどうお考えでしょうか。

鈴木 こういう時代でも僕はずっと新聞をとっていて、新聞を読むことをやめていない。それは何故だろうかとつらつら考えると、やはり全体を見ることができる一覧性が大きい。一つの紙面の中でスペースや見出しの大小で記事の扱いがわかりますし、たぶんこれからも僕は新聞を読むだろうと思っています。

高橋 それからいま書店がどんどん減っていて、ネットだと便利な反面、書店にあったような思わぬ本との出合いみたいなものがなくなっている気がします。これからはそうした思わぬものと出合う橋渡しの役割も、新聞にはあるのではないでしょうか。

鈴木 僕も新聞を読むときは必ず読書欄は見ており、本に関していまどんなことが起きているのかを知る役割も新聞にはあると思います。そうしたなかで、メディアの果たす一番の役割はやはり「本当のことを書く」ということだと思います。それができているメディアは信頼できますね。

高橋 おっしゃる通りです。新聞には本当のことを正しく伝えるという使命がありますし、これだけメディアが乱立している中で、物事の本質をどう捉えるかという役割も果たしていかなければなりません。

鈴木 僕は50年前に週刊誌の記者をしていましたが、同じ事件の記事を他の週刊誌も書いているので見てみると、かなりの頻度で内容が不正確でした。そうした経験もあり、メディアについてはどこが一番正しいことを書いているのかということを、常に意識しています。

高橋 我々も皆さんにそう思っていただけるよう、これからも正しい報道や広告をお伝えしていきたいと思います。本日はありがとうございました。

Profile

鈴木敏夫(すずき・としお)

株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。1948年、名古屋市生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、徳間書店入社。『アニメージュ』の創刊に参加し、副編集長、編集長を務めるかたわら、高畑勲・宮崎駿作品の製作に関わる。85年にスタジオジブリの設立に参加、89年からスタジオジブリ専従。以後ほぼすべての劇場作品をプロデュースする。

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