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平成中村座×宮藤官九郎新作歌舞伎で、勘九郎・七之助が父・勘三郎の夢を引き継ぐ

勘太郎&長三郎兄弟の役者ぶりも必見

傾城・桜坂に会いたい徳三郎が、やっと潜れるほどの門を通ると、そこは不思議の国の第二吉原だった。ここからの場面は実際に観てのお楽しみ。勘太郎&長三郎兄弟が元気いっぱいかつ達者に演じていて、理屈抜きで楽しい場面となっている。

唐茄子の売上金をお仲に渡してしまい、八百八のもとへは帰れないと絶望する徳三郎の前に、蛙のゲゲコ(片岡亀蔵・写真右)とゲコミ(中村扇雀・写真右から2人目)、あめんぼ(荒川良々・写真右から3人目)が現れる。蛙たちから傾城・桜坂が身請けされると聞いた徳三郎は、激高して吉原に向かうのだが……

2022平成中村座「唐茄子屋」_若旦那(小)=中村勘太郎、吉原田んぼの蛙ゲゲコ=片岡亀蔵
第二吉原に入る小門をくぐり、小さな若旦那(勘太郎・写真左)になった徳三郎は、ゲゲコ(亀蔵・写真右)とともにかぼちゃの機関車に乗って桜坂を探す

奇想天外な演出に加え、勘九郎や七之助をはじめとする俳優たちが競うように生き生きと役を勤めていて、冒頭からおしまいまで見どころ満載だ。終演後、観客の拍手喝采はしばし鳴りやまず、劇場は熱気にあふれていた。

中村勘太郎
中村長三郎
中村勘太郎(写真上)と長三郎(写真下)兄弟も、先祖ゆかりの浅草で元気に役を演じる

十八世中村勘三郎は子どものようなところがあり、息子たちがいい舞台をやっていると、師として喜ぶ一方で、「俺があの役をやりたかった」とヤキモチをやいていたという。あちらの世界から『唐茄子屋』を見て、またヤキモチをやいているんじゃないだろうか。

70年代に紅テントの芝居にインスパイアされて勘三郎が思い描いた夢を息子たちが受け継ぎ、またひとつ鮮やかな実を結んだ。『唐茄子屋』は、胸を熱くさせる作品である。

text: 香月友里

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