市川染五郎と市川團子『弥次喜多流離譚』で歌舞伎の次代を背負って立つふたりが熱演
2022.8.17
現在、歌舞伎座で上演中の「八月納涼歌舞伎」は、話題性のある演目が目白押し。中でも第三部の『弥次喜多流離譚』は、夏公演の定番となっている人気シリーズの最新作である。 難しいことはなし。ひたすら笑って楽しめる演目なのが人気の所以だが、年を追うごとに女性客が増えているのは、今注目の若手歌舞伎俳優が出ているからだろう。 ※この記事は8月上旬の上演内容にもとづいています。
2022.8.17
現在、歌舞伎座で上演中の「八月納涼歌舞伎」は、話題性のある演目が目白押し。中でも第三部の『弥次喜多流離譚』は、夏公演の定番となっている人気シリーズの最新作である。 難しいことはなし。ひたすら笑って楽しめる演目なのが人気の所以だが、年を追うごとに女性客が増えているのは、今注目の若手歌舞伎俳優が出ているからだろう。 ※この記事は8月上旬の上演内容にもとづいています。
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原作の『東海道中膝栗毛』は、江戸時代に10年以上にわたり刊行された十返舎一九の滑稽本。仕事は上手くいかず酒と女でしくじってばかりの弥次郎兵衛と、放蕩三昧で借金取りに追われ弥次郎兵衛の長屋に居候する喜多八が、どうしようもない現実から逃れるように旅に出て、行く先々で他愛もない珍騒動を巻き起こす道中記だ。
“弥次さん喜多さん“の愛称で長く愛され、これまで数多く舞台化、映画化された人気読物の世界観を生かしつつ、現代的なエッセンスを盛り込んでエンタテインメント性たっぷりな新作歌舞伎に仕立て上げたのが、松本幸四郎&市川猿之助のコンビによる演目「弥次喜多」シリーズである。
江戸木挽町にある歌舞伎座で裏方のアルバイトをしながらその日暮らしをする弥次郎兵衛(十代目松本幸四郎)と喜多八(四代目市川猿之助)の珍道中が展開する第一作が上演されたのは2016年。以来、歌舞伎座の夏公演として4作が上演された。途中、コロナ禍の2020年に配信作品として制作されたスピンオフ映像作品「図夢歌舞伎(ずぅむかぶき)『弥次喜多』」を経て、本公演第5作となるのが『弥次喜多流離譚(リターンズ)』である。
シリーズものとはいえ、奇想天外でハチャメチャで、辻褄とか伏線回収とか野暮なことは言いっこなしよ、という作品なので、前作を知らなくても、なんなら歌舞伎をよく知らなくても文句なく楽しめるのが、このシリーズの醍醐味だ。
主役は弥次郎兵衛と喜多八だが、もう一組の主役ともいえるコンビがいる。それが、八代目市川染五郎演じる由緒正しき伊月家の嫡男・伊月梵太郎と、五代目市川團子扮する梵太郎の家臣・五代政之助だ。
父が急死し、母も病気で倒れてしまったため、家督を守り母の病気平癒を願うためお伊勢参りに向かう梵太郎と、若殿を守るため随行する政之助は、旅の途中で弥次郎兵衛と喜多八に出会い、四人で道中を共にすることになる。
本シリーズの第一作に出演した時、團子は中学一年生で、染五郎(当時は四代目松本金太郎)は小学六年生だった。それが今や18歳と17歳。染五郎はNHK 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で冠者殿こと源義高を演じて注目を浴びた。また團子は9月2~4日に市川猿之助が芸術監督を勤める京都芸術劇場春秋座にて、澤瀉屋の家の芸である猿翁十種の内『独楽』を披露するなど舞踊でも実力を培っている。
香月友里
かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る
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