【鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」】墓参りには「菊の鉢植え」がフランス流
2022.10.22
2022.10.22
[INDEX]

だが、なぜ、万聖節に菊の花なのだろう。
菊はもとからヨーロッパにあった花ではなく、大革命のあった1789年に、マルセーユと東洋を結ぶフランス船の船長だったピエール=ルイ・ブランカールが中国から3株をもたらしたのが最初とされ、やがて、19世紀の中ごろから、プロヴァンス地方で栽培されるようになったが、19世紀後半から20世紀の文学作品をあたってみると、とかく離別の歌や死別の歌に菊の花がうたわれているケースが多い。
それというのも、菊の花咲く秋は、ヨーロッパでは、日本のさわやかに晴れ渡った秋とちがって、雨がじとじと降り続く物悲しい季節で、冬篭もりと人生の終わりを連想させるからである。「万聖節のような天気」といえば「寒々とした気候」という意味である。菊は「あまりにも短かった我らが夏の輝き」(ボードレール)に惜別を告げる花なのだ。
しかし、それは同時に厳しい冬にむかって、心の準備が整ったことを伝える花でもある。万聖節の菊が散ったのち、パリの街角にはいっせいに劇場ポスターの花が咲き、華やかなクリスマス商戦の季節がやってくる。
【グリの追伸】暑かった夏も終わり、気持ちの良い秋になりましたが、これからの楽しみは、なんといっても日向ぼっこ。この家は朝の光が入るので最高です!

photos by Shigeru Kashima
【関連記事】エスプレッソが市民権を得るまで
【関連記事】パリの街中から車が消えた! エッフェル塔も凱旋門も静かに観られる特別な日
鹿島茂
かしましげる 1949年横浜生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専門は19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰
リンクを
コピーしました