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【鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」】墓参りには「菊の鉢植え」がフランス流

菊といえばいかにも日本を感じさせる花ですが、じつはフランスでもポピュラーな花なのだそうです。秋を彩るこの花とフランス人との関わりを、フランス文学者の鹿島茂さんが愛猫のグリ(シャルトリュー 10歳・♀)とともに解説します(本記事は鹿島茂:著『クロワッサンとベレー帽 ふらんすモノ語り』(中公文庫)から抜粋し作成しています)

街中に菊の花があふれる日とは

秋の菊は、春の桜と並んで「日本の花」として世界的に知られている。

しかし、菊はヨーロッパ、とくにフランスでは、意外なことに日本とはまったく関係のないカトリックの行事によって、一般民衆に親しまれている。

11月1日の朝に街に出てみると、パリの道路は、いつもとことなる方向にむかう車でごった返している。どの車も、ペール・ラシェーズ墓地やモンマルトル墓地など、先祖の墓のある墓地に出掛けようとしているのだ。この日は「万聖節(ばんせいせつ)Toussaint」といって、キリスト教のすべての聖人をまとめて祝う大祝日で、先祖供養の日でもあるからだ。

ところで、この祝日はさながら日本の重陽(ちょうよう)の宴(旧暦9月9日)のように、街中に菊の花があふれる日でもある。というのも、たいていの家庭が、菊の花を持ってお墓参りに出掛けるからである。少し古い統計だが、2世帯に1世帯は菊の花を墓にそなえるという。

ただ、日本とちがって、フランス人は、お墓にそなえるのに、切り花ではなく鉢植えの花を好む。そのため、この万聖節のあとにペール・ラシェーズ墓地などを歩くと、しばらくのあいだは、菊の花が墓地一面に咲き乱れ、何か、日本の菊の展示会にでもきているような錯覚を覚える。

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Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専門は19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰

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