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鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」【イギリスに紅茶、フランスにコーヒーが根付いた理由】

イラスト◎岸リューリ

サロン・ド・テのマダムたち

では、フランスよりもひと足先にコーヒーハウスが大流行したイギリスではどうだったかというと、コーヒー植民地の少なさのためにコーヒーハウスが衰退したのとは逆に、豊富な供給源を得た紅茶は英領西インド諸島産の砂糖と結びついてステータス・シンボルとなり、「家庭内飲料」としてしっかりと定着した。

紅茶の国イギリスとコーヒーの国フランスという嗜好品の棲み分けはこうして生まれたのである。

もっとも、フランスでも一部の上流階級、とりわけ婦人たちはイギリスかぶれでコーヒーよりも紅茶を好む傾向があり、19世紀末には、紅茶とケーキを売り物にしたサロン・ド・テ(ティー・サロン)が誕生した。いまでもパリ16区あたりの高級住宅街にはプルーストの時代の上品な雰囲気を残すサロン・ド・テがある。こうしたサロン・ド・テで、リモージュやセーヴルの高価なティー・サーヴァーをぼんやりと眺めながら、周囲の上品なマダムたちがかわす美しいフランス語に耳を傾けるのは一つの快楽でさえある。

ただし、多少の選択肢はあるものの、紅茶の味はイギリスのそれに遠く及ばない。

【グリの追伸】寝てるところを撮るのは禁じ手にして欲しいと思います。とくに接写はやめてもらいたいです。これでも、一応、chat femelleですから。

寄りすぎです

photo by Shigeru Kashima

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Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰。

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