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【世界大会開催】アートメダルとは? 知られざる自由な芸術

メダルと言えば思い出すのは、やはりオリンピックのメダルでしょうか。実は、メダルそのものを表現の場ととらえるアートメダルという分野が、世界的に注目を集めています。その世界大会となる国際メダル展が現在、日本で初めて「FIDEM TOKYO 2020」として開かれました。ルールは手の平サイズに収まっていることだけ。世界中のアーティストがアイデアを競うアートメダルとは果たして何物なのでしょうか。

原則として2年に1度開かれる国際メダル展は、今回が36回目。アジア圏での開催も初めてです。当初は2020年の予定でしたが、新型コロナウイルスの流行を受け、1年延期されていました。会場は、江戸文化を今に引き継ぐ東京・目黒のホテル雅叙園東京の「百段階段」。37か国の約850点のアートメダルが展示されてました。

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内覧会の模様。日本の建築文化と不思議にマッチ

それはさておき、アートメダルの歴史を紐解くと、15世紀にイタリアで始まったとのこと。もともとは特定の個人や出来事を記念し、お祝いに贈ることが多かったのですが、世界各地に広まるにつれ、用途や表現対象が多様化していったようです。1937年には今回の展示会を主催するFIDEM(国際芸術メダル連盟)がパリで設立され、現在では40か国以上の団体が参加しています。

アートメダルは「手のひらのアート」と言われるだけに、今回の展示会でも、規定はサイズが15cm×15cm×15cm以内ということくらい。メダルという言葉が想像されるような円盤のような形はごく一部で、むしろプレートやレリーフ、ブローチといった感じで、立体的なオブジェも数多く見られます。素材も金属とは限らず、木やガラス、プラスチックなども使われています。

アートメダルは手にとって楽しむことを前提として考えられている(残念ながら触れる作品はほとんどありません)ので、横の面や、下の面にも、意匠を施していることが多いです。


まずは、分かりやすそうなアートメダルから紹介します。

イタリア人作家による おなじみレオナルド・ダ・ヴィンチの肖像です。ブロンズが光ります。好きな英雄を題材にするのでしょうね。

第2次大戦中に多くのユダヤ人にビザを発給し、亡命を手助けしたリトアニア日本領事館領事代理の杉原千畝。リトアニア人作家は、日本大会を意識してこのアートメダルを制作したのでしょう。

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カナダ人女性作家の「フィデム(国際メダル連盟のこと)の33個の宝石」と題した作品。彼女は、「私にとってアートメダルとは、特別なメッセージを伝えたり、友人や家族、地域の人々の個人的な生活における特別な出来事を記念することができます」との言葉を送っています。この宝石一つ一つに、なにか思いが込められているような気がします。

だんだん難しくなります。

オランダ人作家は母をモチーフにしているそうです。彼女は「手に取り、他の人へ届くようにメッセージをもって鑑賞します」とコメントしています。これも「メダル」なんです。

庭園を表現したというハンガリー作家はアートメダルには「メッセージ性があること」が必要だと訴えています。私には一瞬、左奥はキッチン道具にも見えてしまいましたけど、何か面白い形ですね。

このアートメダルでは、ガラスの中にプラスチック素材が埋め込まれています(?)。環境問題を認識させようという狙いなのかな?

フランス人作家。鳥の巣と珊瑚かな? クレイアートのオブジェのようです。

最後は日本からのアートメダルです。

「FIDEM TOKYO 2020」の実行委員長を務め、メダル製造会社「正英」を営む柿坪正晴さんの作品です。柿坪さんは「庭の石ころで気に入った形があったので、磨いてみたのです」と語ります。

アートメダルには正解はなく、何をするのも、どう解釈するのも自由であることを体現したような作品でした。

なんか自分でやってみても、面白そうです。これが「アートメダルです」と言えば、「アートメダル」になるのですから。

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FIDEM国際メダル「FIDEM TOKYO 2020」開催概要


<終了しました>


日程:2021年12月2日(水)〜16日(木)
会場:ホテル雅叙園東京(東京都目黒区下目黒1丁目8−1)
入場料:一般 ¥1,000円、小学生~大学生 ¥500


特設ページ
http://fidem2020.main.jp/archives/information/outline

Profile

戸塚光彦

経済記者からなんでもライターに。私の画風をヘタウマであると認められる日は実は近いはず。

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