ヒグチユウコから横尾忠則まで アートなラーメンどんぶりを買いにギャラリーへ 21_21 DESIGN SIGHT
六本木の東京ミッドタウンにある「21_21 DESIGN SIGHT」で開催中の「ラーメンどんぶり展」。どんぶりはさることながら、ラーメンのトリビアを知ることもでき、知的好奇心を満足させてくれるユニークな企画展だ。会場を出る頃には、ラーメンどんぶりの見方が変わっていること間違いなし。
六本木の東京ミッドタウンにある「21_21 DESIGN SIGHT」で開催中の「ラーメンどんぶり展」。どんぶりはさることながら、ラーメンのトリビアを知ることもでき、知的好奇心を満足させてくれるユニークな企画展だ。会場を出る頃には、ラーメンどんぶりの見方が変わっていること間違いなし。
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この企画展を鑑賞した後、「目からウロコが落ちる」とは、まさにこのことだと思った。たかがラーメンどんぶり、されどラーメンどんぶり。幼少期から、目にしている、あのお馴染(なじ)みの形にはしっかりと意味があることを、会場を一巡することで知ることになったからだ。
まず、チャルメラの音楽とともに多くの日本人の脳裏に刻まれているであろうラーメンのイメージ。どんぶりの内側の縁に描かれている、四角い渦巻模様が何を表しているか答えられるだろうか。あれは、雷を表したものなのだという。中国の伝統的な紋様で「雷紋(らいもん)」と呼ばれ、魔除けや豊作の象徴なのだ。しかし、中国の麺料理の器にはあまり見られず、ラーメンが日本に広まる過程で中国風の雰囲気を演出するために取り入れられたと考察されている。
次に、どんぶりとセットとなっていて、スープをおいしく味わうためにも必須のレンゲ。ラーメンのスープを飲むために使われ出したのは1980年代以降と見られているそうだ。それ以前は、どんぶりを手に持って口縁に口をつけてスープをすするのが一般的だったのだとか。密かに謎に感じていた人もいるかもしれないが、レンゲの取っ手に穴があるのは、吊(つ)るして保管できるのはもちろん、吊るすことで全体に釉薬(ゆうやく)をかけながら焼成できるという利点があるからなのだ。
そのほかにも、ラーメンどんぶりの容量や重さ、厚み、製造方法などを細部にわたるまで知ることができるように、展示が工夫されている。


この展覧会のディレクターは、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏とライターの橋本麻里氏が務め、2人が2012年から取り組んでいる岐阜県の美濃焼に関するプロジェクトのひとつである、「美濃のラーメンどんぶり展」がきっかけとなっている。
実は、日本のラーメンどんぶりの90パーセントは美濃焼。そのため、これまで、さまざまな視点でラーメンどんぶりを切り取ることで、1300年以上の歴史を持つ美濃焼の歴史や背景などを伝えてきた。ラーメンどんぶりの成り立ちから、器の産地である東濃地方の風土と環境、歴史について自然と学ぶことができる構成になっているのだ。



ラーメンどんぶりだけではなく、ラーメン文化そのものを知ることができるのも企画展の魅力である。
会場の入り口に掲げられたパネルには、中国の麺文化をルーツに、近代日本で独自の発展を遂げたラーメンの歴史と現在がまとめられている。
たとえば、都道府県別の人口1万人あたりのラーメン店数。意外なことに、トップ3は、上から山形県、新潟県、秋田県。店舗の数だけいえば当然、東京都が1位で、北海道、神奈川県と続くが、人口1万人あたりでいうと、この3つの都道府県はいずれも10位以内に入ってこないのだ。
山形市は、外食費に占める中華そばへの支出、都道府県庁所在地別ランキングでも1位に輝いており、県民のラーメン好きが証明されている。
ちなみに、公表されている数値をもとに、自宅や外で、日本に住む人がどれだけラーメンを食べているかに関しては、即席麺の消費量は1年間1人あたり47.2食。外食費に占める中華そばへの支出は、1年間1世帯あたり7763円と表せるそうだ。
2023年に調査された世界の即席麺市場は、1202.1億食。ダントツの1位は中国で、数字の差は開くが2位はインドネシア、3位はインド、4位はベトナムで、日本は5位という結果だった。
一つだけ異を唱えるなら、「ラーメン」という呼称が日本で広く使われ始めたのは1960年代であるという記述。北海道出身の76歳の知人いわく、幼少期(1950年代)には北海道ではラーメンと呼んでいたというからだ。何事も諸説あるが、企画展ではラーメンは1910年代以前には「南京そば」、後に「支那そば」と呼び名を変え、日清食品のインスタントラーメン「チキンラーメン」のヒットとともにラーメンという呼び名が全国に定着したそうだ。
こんな、ラーメンとラーメンどんぶりの多様な世界に、どっぷりと浸った帰りには、きっと一杯のラーメンが食べたくなっているはずだ。
企画展「ラーメンどんぶり展」
会期:〜2025年6月15日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
東京都港区赤坂9-7-6
tel:03-3475-2121
休館日:火曜日
開館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,600 円、大学生800 円、高校生 500 円、中学生以下無料
https://www.2121designsight.jp/program/ramen_bowl/
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