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俳優ナタリー・ポートマン、女子サッカー界への挑戦。──男女の格差をなくすために

Bloomberg / Getty Images

2023年8月、FIFA女子ワールドカップ2023が大盛況のうちに幕を閉じ、世界的にますます人気が高まっている女子サッカー。今もっともホットなスポーツともいえる、その女子サッカー界で話題を呼んでいるのが、ロサンゼルスを拠点とする新たなプロの女子サッカーチーム、エンジェル・シティFC。オーナーも出資者も大半が女性という画期的なチームの共同創設者のひとりは、あのナタリー・ポートマン。アメリカではチームの設立からリーグデビューまでの舞台裏に迫るドキュメンタリー番組も放映されるなど、大きな注目を集めている。

ナタリー・ポートマンといえば、子役出身でアカデミー賞受賞経験を持ち、製作や監督も手がける実力派俳優。ハーバード大学で心理学を専攻後、イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学で学んだ彼女はプライベートでは2児の母で、現在42歳。活動家としての顔も持ち、チャリティ団体「WE」のアンバサダーとして女子教育の拡充などに取り組むほか、エンターテインメント業界の女性たちが主導するキャンペーン「Time’s Up」の創設メンバーでもある。そんなナタリーの新たな肩書きが、エンジェル・シティFCの共同設立者で共同オーナーだ。

エンジェル・シティFCはナタリーの人生において「もっとも特別な冒険」

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2022年春にアメリカ女子サッカーのトップリーグNWSL(ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ)に参入した、カリフォルニア州ロサンゼルス(以下LA)を本拠地とするエンジェル・シティFC。女性が設立し、女性が率いる初の女子プロサッカーチームで、なでしこジャパンこと日本代表のフォワード遠藤純選手も所属している。

米『CBS』によると、チームのガール・パワーのメッセージはLAの街で反響を呼んでおり、2シーズン目を迎えた2023年、収容人数2万2000人のホームスタジアム、BMOスタジアムでのチケットが完売するほどの人気に。地域に活気あるムードを作り出しているという。

全米では今年5月、FIFA女子ワールドカップ開幕前夜に、ナタリー自身がエグゼクティブプロデューサーとして名を連ねるドキュメンタリー番組『エンジェル・シティ』が米『HBO』で放映スタート。このシリーズでは、チーム創設の舞台裏や記念すべきデビューシーズンの感動的なストーリーが描かれている。3月に公開された予告映像で、エンジェル・シティFCは人生で「もっとも特別な冒険のひとつ」だと語ったナタリー。「ここには脚本がないから、私たち自身で書かなければならないのよ」

女子サッカーの認知度を高めたいという想いがチーム創設のきっかけに

Apple TV +のドラマ「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」や俳優ライアン・レイノルズとロブ・マケルヘニーが買収したウェールズのクラブチーム立て直しを描くDisney+のドキュメンタリー「ようこそレクサムへ」のヒットで、全米のサッカー人気は上昇中という

英紙『Guardian』によると、2019年4月、ナタリーは当時、男性選手との賃金格差をなくすために法廷で闘っていたアメリカ女子代表チーム(USWNT)を応援するため、友人の俳優ジェニファー・ガーナー、エヴァ・ロンゴリア、ウゾ・アドゥバ、ジェシカ・チャステインとともに、試合を観戦。その後、同年夏に女子ワールドカップを観戦し、選手たちの個性と使命感が融合したような姿に心を奪われたという。

「私たちは試合を見に行くようになって、すぐに熱狂的なファンになりました」と2020年、米誌『PEOPLE』に語ったナタリー。「でも私たちはこのスポーツがふさわしい賞賛を受けていないことに徐々に気がつき始めたのです」

女子スポーツが米スポーツメディア報道のわずか4%という調査を引き合いに出し、「アメリカにおける女子サッカーの認識を変えるチャンスがあると信じていた」と語ったナタリー。「その一翼を担いたいと思った」という。

「もちろん、選手たち自身は素晴らしい活躍を見せ、多くの注目を浴びてきました。でも、すべてがいつも彼女たちの成功や人気につながっているわけではない」と、選手たちがその価値にふさわしいだけの報酬も関心も得られていないと指摘。

「このスポーツへの人々の関心を変えるために、私たちができることはなんだろう?」と思ったとき、LAがアメリカのエンターテインメントの中心で、熱狂的なスポーツファンを持つ都市であり、メディアが注目することに着目。「LAにチームがあったらどうだろう」と考え始めたという。

女子ワールドカップ開催中、シドニーで行われたイベントで。

ナタリーは今年8月、オーストラリア・ニュージーランド共催となった今回のワールドカップの期間中、シドニーで行われたエンジェル・シティFCのイベントに出席。そこで「私がNWSLを好きになったのは息子の影響なんです」と12歳の長男アレフの存在を明かした。

『Guardian』によると、ナタリーは女子ワールドカップ前回大会のときに、息子がリオネル・メッシやカリム・ベンゼマのような男性スター選手に対するのと同じように、ミーガン・ラピノーやアレックス・モーガンのような女性選手たちに憧れを持って熱中している姿を目の当たりにし、「これは文化の変化」だと思ったとか。

ナタリー自身の幼少期はスポーツをすることも見ることもなく、自分がプロスポーツに関わることになるとは思ってもみなかったそうだが、女子サッカーがこうなってほしいと彼女が望むビジョンのすべてをかなえるチームを作ることを決意したという。

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