【鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」】明るさを求める日本人、暗さを好むフランス人
2022.11.22
2022.11.22
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この仮説、じつはドイツの社会史学者シヴェルブシュの考えを援用したものなのだが、それほどに的をはずしてはいないと思う。
なぜかといえば、ローソクの時代には、炎そのものはつねに剥き出しで、装飾の精神はもっぱら燭台(しょくだい)にのみ向けられていたのに対し、電気照明においては、何よりも電球を覆うシェードの部分に装飾性が発揮されたからである。
つまり、光を覆いかくすランプ・シェードという発想は、電球の出現をもって初めて生まれたのである。いや、正確には、ランプ・シェードは電球をローソクの照度に少しでも近づけるための道具だったといったほうがいい。
新しいテクノロジーが出現するとき、そのどこかの部分に必ず前の時代のテクノロジーの影響が現われているものなのである。
photos by Shigeru Kashima
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鹿島茂
かしましげる 1949年横浜生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専門は19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰リンクを
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