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秋も深まってきました
【鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」】ボジョレ・ヌーヴォーはパリのビストロの救世主
2022.11.3 / marie claire
11月の第3木曜日といえば、ボジョレ・ヌーヴォーの解禁日。今年の新酒を味わう前に、ぜひこちらのエッセイを。フランス文学者の鹿島茂さんが愛猫のグリ(シャルトリュー 10歳・♀)とともに、年に一度の"ワインのお祭り"について解説します(本記事は鹿島茂:著『クロワッサンとベレー帽 ふらんすモノ語り』(中公文庫)から抜粋し作成しています)
突然のように注目を集めだした
ブームというのはすぎてしまうと、あれはいったいなんだったのだろうと首をかしげたくなるのがほとんどだが、バブル全盛期に突如日本を襲った11月第3木曜日のボジョレ・ヌーヴォー騒ぎなどはこのいい例である。
しかし、ブームを経過したことで、その後ワイン熱が高まり、至るところにワイン通が誕生したのだから、これはこれで目出度いことなのかもしれない。
ところで、このボジョレ・ヌーヴォー、日本ではワイン通を自任する者はすべからくこれを馬鹿にすべしという不文律があるようだが、私ははっきり言ってうまいと思う。というのも、高級ワインについてはそれほど知らないが、低級ワインならフランスの定食屋でさんざん飲んで、そのまずさのほどをいやというほど知っているからだ。あのまずさにくらべたらボジョレ・ヌーヴォーは値段の割に断然うまい。ようは相対的なうまさの問題なのである。
じつは、フランスでボジョレ・ヌーヴォーが第二次大戦から戦後にかけて、突然のように注目を集めだしたのも、この「相対的なうまさ」のためだった。
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