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【妹たちへ】フェミニズムとは「自分自身」を生きること 田嶋陽子

田嶋陽子さん(英文学・女性学研究者)

どうしたらいいかわからない……。 女性は人生の選択肢が多く、仕事でもプライベートでも迷うことは少なくありません。そんな時、ちょっと先を生きている「姉」たちの言葉から自分らしく生きるヒントを探してみませんか。

田嶋陽子(英文学/女性学研究者・元参議院議員・書アート作家・歌手)

「女らしさ」を生きるのではなく、「自分らしさ」を生きる、いえ、「らしさ」はいりません。「自分を生きる」です。フェミニズムとはつくられた「女」から、一人の「人間」になることなんです。

「男らしさ、女らしさ」という社会規範の押しつけは、男を一級市民に、女を二級市民にして性別役割分業を定着させ、男女間の格差を増長させます。男が「男らしさ」を生き、女が「女らしさ」を生きると、この社会はいびつになります。なぜなら、女が女らしさを生きてしまうと半人前にしかならないからです。現に、今の日本はまだ男性中心の偏った社会です。男性主体の見方でつくった社会では、取りこぼしが多く、弱い立場の人たちに目が行き届きません。

社会はとかく女性に優しさや気が利くこと、キレイでいることや愛嬌があることなどを求めます。けれど、そんな他の人に便利な人になることよりずっと大事なのは、一人の自立した人間になるように自分を育てて、自分の人生を生きることです。社会が求める女性像に縛られるあまり、自分を生きることを忘れてしまうことがよくあります。そうすると不機嫌で意地悪な人になります。人生のつじつまが合わなくなったりします。

女性はもっと快適に、心地よく、自分を一番大事にして、自分の思う通りに生きていいのです。そうすれば、本当の意味での優しさや愛にあふれた人に成長することができます。一人の人間としてしっかり立って、自由を保障する経済力を持ち、人生を決断して、独立心や夢に向かって生きていくべきです。そうすることで他の人とも手をつないで、今より住みやすい社会をつくっていけるはずです。

これからの世の中は、女性も働いて税金を納め、社会や政治に参加して自分たちの意見を社会に伝えていかないと社会全体が立ち行かなくなります。皆さんは、そういう時代を生きています。民主的で差別のない社会をつくるには、何より女性たちが目覚めて、一人ひとりが自分の責任で発言し、行動し、参加していく必要があると思っています。

皆さんは、どんな人生でも選択することができます。そして、どんな人生を選択するかは、皆さんの思いひとつです。希望ある未来は、皆さんが自らつくる権利があることを忘れないで。

※本記事は「50代からの生き方のカタチ―妹たちへ―」(関西学院大学ジェネラティビティ研究センター編纂)から抜粋し作成しています。

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Profile

田嶋陽子(たじま・ようこ)

英文学・女性学研究者。津田塾大学大学院博士課程修了。元法政大学教授、元参議院議員。オピニオンリーダーとして活躍する傍ら、書アート作家、シャンソン歌手としても活動。著書に『愛という名の支配』(新潮文庫)、『ヒロインは、なぜ殺されるのか』(講談社プラスアルファ文庫)、『田嶋陽子の我が人生歌曲(シャンソン)』(田嶋陽子女性学研究所)など多数。

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