【星のやを唎く】沖縄の原風景が残る「星のや竹富島」。離島の集落で、暮らすように滞在する
2022.7.6
2022.7.6
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次がメインの肉料理。和牛を泡盛酒粕のクルートで包み焼きにした。赤身肉が泡盛酒粕の甘い香りを纏い、陶然とする。クラシックなベアルネーズソースが上品な味わいに絶妙にマッチする。特別な料理にワインも変化球を楽しんでみたい――。そんな下心を見透かしたようにワインのサービス担当者の出してきたのが、カリフォルニア・ローダイ地区のジンファンデル。マイケル・デイヴィッド・ワイナリーのセブン・デッドリー・ジンス2018は少量のプティ・シラーで風味を調えているが、ジンファンデルの造り手としてポピュラーで、どちらかと言えばカジュアルな一本。実は個人的にも愛飲している。「そう来たか」と、意表を突く選択にうれしくなった。ブルゴーニュのグランクリュでは当たり前すぎるのだ。紫色のベリー系の果実がギュッと詰まったような 衒いのないワインが正直な料理に合わないわけがない。
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実はこれだけでは終わらなかった。和牛のクルートに泡盛の酒粕が使われていたので、もしかしたら泡盛も合うのではとつぶやくと、ソムリエの表情が「待ってました」とばかりに晴れやかになった。「白百合」「泡波」、そして「八重泉」……。八重山地方を代表する多彩な泡盛が小さな酒杯に注がれて次々と出された。牛肉と泡盛の組み合わせは初めての経験だが、結構いける! 蒸留酒なのに食中酒としても十分通用するというか、地元の人たちはそうしてきた。国内外問わず、イノベーティブ系のレストランでペアリングを頼むと、リストの中に必ずといっていいほど日本酒が入るようになった。これからは特色のある泡盛もオンリストされそうな予感がしているのは自分だけだろうか。
そしてコースは終盤に。アヴァン・デセールのジーマミーのブランマンジェに続いて、「パイナップルのバシュラン仕立て ココナッツとスパイスのアクセント」で締めくくった。「バシュラン」とはメレンゲにアイスクリームやホイップクリームを挟んだフランスの伝統菓子。ただ、甘いだけでなく、パルメザンチーズのほのかな塩味やディルやスパイスの香りをアクセントにしていて、「別腹」という例えが嘘ではないことを実感した。
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「島人(しまんちゅ)の朝ごはん」と題した朝食も楽しい。「島の九品朝食」「ゆし豆腐粥朝食」「海風(うみかじ)・ブレックファスト」「シリアル・ブレックファスト」から選ぶことができる。連泊を前提としているため、朝食の選択肢も多様だ。
「琉球ヌーヴェル」春のディナーコース 概要
■実施日:~7月24日(翌日から夏のコースに)
■時間:17:30~20:00
■料金:1名 14,520 円(税・サービス料込 、宿泊料別)
■By The Glass Tour:ペアリング3種(4,950円)、ペアリング4種(6,380円)、ペアリング5種(7,700円)(すべて税・サービス料込)
■予約:要予約。公式サイト( https://hoshinoya.com/taketomijima/)にて 前日 まで受付
■対象者:宿泊者
■備考:状況によりメニューの内容、食材が 一 部変更になる場合があります。
星のや竹富島
■所在地 :〒907-1101 沖縄県八重山郡竹富町竹富
■電話 :0570-073-066(星のや総合予約)
■客室数 :48室・チェックイン:15:00/チェックアウト:12:00
■料金 :1泊 112,000円~(1室あたり、税・サービス料込、食事別)*通常予約は2泊より
■アクセス:石垣港よりフェリーで約10分 竹富港より送迎有
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©︎marie claire/text: Naohiko Takahashi
高橋直彦
『マリ・クレール』副編集長。石垣島へは何度か訪れたことがあるが、八重山の離島へ足を延ばしたのは今回が初めて。街並み、コバルトブルーの海、そして地域の特徴を色濃く反映した芸能と民俗……。東京から訪れると、島そのものが「圧倒的な非日常」に満たされていた。そうした環境に徹底して寄り添おうとする「星のや竹富島」の賢明な姿勢を称賛したい。今年で開業10年とのことだが、これからのリゾート施設のあり方をある意味、先取りしていたと思う。機会と資力に恵まれれば、再訪したい施設がまた一つ自分の中にできた。
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