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トーハク、集古館、そして民藝館……。初夏の東京で、沖縄の美を堪能し尽くす【what to do】

沖縄を代表する美のオールスターがトーハクに勢ぞろい。すでに展示が終わっている作品もあるので要確認!(撮影・高橋直彦)

知的好奇心あふれる『マリ・クレール』フォロワーのためのインヴィテーション。それが”what to do”。今年5月に沖縄が本土に復帰してから50年となったのを記念して、さまざまなイベントが東京で開かれている。本来なら、ある程度の出費を覚悟して、時間を割いてでも現地で観るべき貴重な文化財が向こうから来てくれる僥倖。それらに駆け付けなくては「フォロワー」の名が廃る。いずれにしても、都心ではしばらく経験できない貴重な機会。この夏は、柳宗悦が「奇蹟の如く」と讃えた琉球の美のシャワーを全身で浴びたい。

東京国立博物館(東京・上野公園)で6月26日まで開かれているのが沖縄復帰50年を記念した特別展「琉球」。明治政府によって日本に組み入れられるまで琉球王国で築かれた独自の文化と歴史を歴史資料や工芸品、そして国王の尚家に伝わる宝物などを通して紹介する。過去最大規模で、出品目録を見ると、それぞれの展示期間は異なるものの、展示品に振られた番号は「363」まである。

図録の厚さが気迫を感じさせる「琉球」展

私物の沖縄関連の企画展の図録の中でも、最上部「琉球」展の図録の厚さが際立つ(撮影・高橋直彦)

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気合の入りようは図録の厚さからも伝わってくる。測ってみると約3.7センチ。2018年にサントリー美術館で開かれた「琉球 美の宝庫」展の図録が約2.1センチ。ちょうど10年前に同館で行われた「沖縄復帰40周年記念 紅型 琉球王朝のいろとかたち」展の図録が2.5センチ。そして20年に東京都写真美術館で開催された「TOPコレクション 琉球弧の写真」展の大判の図録で約1.9センチ。今回の琉球展の図録の厚さに匹敵するのは、沖縄がらみの企画で言えば07年から08年にかけて沖縄県立博物館・美術館で開かれた「美術館開館記念展 沖縄文化の軌跡 1872-2007」ぐらいだろうか。こちらの厚さは約3センチ。厚さでは負けるが、判型が今回の琉球展よりも大きい。

重要文化財 銅鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘) 藤原国善作 第一尚氏時代・天順2年(1458)沖縄県立博物館・美術館蔵 万国津梁の鐘には、琉球が世界の架け橋にならんとする気概を記した銘文が刻まれている(撮影・高橋直彦)

沖縄の至宝を東京で展観できる幸せをかみしめる

国宝 黄色地流水蛇籠鶴菖蒲文様紅型木綿衣裳〔琉球国王尚家関係資料〕第二尚氏時代 18~19 世紀 沖縄・那覇市歴史博物館蔵
 沖縄県指定文化財 聞得大君御殿雲龍黄金簪 第二尚氏時代・15~16世紀 沖縄県立博物館・美術館蔵

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会場には万国津梁の鐘(重要文化財)や黄色地流水蛇籠鶴菖蒲文様紅型木綿衣裳(国宝)、そして聞得大君御殿雲龍黄金簪(沖縄県指定文化財)など、琉球の文化遺産を代表するオールスターがずらりとそろう。その多くは、沖縄県立博物館・美術館や那覇市歴史博物館、それに浦添市美術館などを回れば観られるかもしれないが、東京で起居している無精な身にとって、近場で一堂に展観できるのがうれしい。沖縄から直線距離で1500キロ以上の彼方から宝物が上京してきてくれたのだ。現地で観て回る費用と手間のことを思えば、一般観覧料の2100円を破格に安いと感じるのは自分だけだろうか。

東京展は会期末だが、展示は九州国立博物館(7月16日~9月4日)へも巡回する。太宰府天満宮に隣接し、菊竹清訓が設計を手がけた施設で展示を観ると、アジア諸国との交易を通して育まれた琉球の多彩な魅力がより一層際立ってくるかもしれない。

Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。加齢と共に物欲は萎えつつあるが、芭蕉布の着物だけは生きているうちに是非羽織ってみたいと思う。独特の張り、風がすっと抜ける軽やかさ、そして凜としたたたずまい……。恐らく最上級の贅沢とは、手仕事が凝縮された芭蕉布を纏った時のようなことを指すのだろう。果たして賃労働の身にも買えるのか? 関係者に相場を聞いて、きっぱりと諦めることができた。桁が違った。パンデミック下で難しいとは思うが、着付け体験などのイベントを実施してもらえぬか。

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