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東京発信のクリエイションに期待

©️JFWO

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。3月は「Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 A/W」、「TOKYO CREATIVE SALON」と東京から世界に向けてのクリエイティビティの発信が続いた。どこまで世界に届くのか、期待を込めて見守りたい。

今回から「Rakuten Fashion Week TOKYO」は参加ブランドの数よりも「クオリティー」を重視

東京でのファッションウィークは、もともとは読売新聞社の110周年事業として開催した「東京プレタポルテ・コレクション」がその発端です。それまでTD6(東京で活躍するトップデザイナー6人、金子功、菊池武夫、コシノジュンコ、花井幸子、松田光弘、山本寛斎によって日本でファッションウィークの開催を目指して結成されたグループ)でファッションショーを一緒に開催していたのを、1985年読売新聞社が「東京プレタポルテ・コレクション」として大きくまとめた形にして始まったのです。

今回の「Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 A/W」の参加ブランドは43ブランド。独自にショーの会場を設定したブランドもありましたが、メイン会場は今季も渋谷ヒカリエと表参道ヒルズ。またデジタルで発表したブランドは8ブランド。デジタルならではの表現方法でブランド独自の世界観を発信しました。

「Rakuten Fashion Week TOKYO」ではコロナ禍の時は海外への情報発信をオンラインで行ってきましたが、今回は海外からもプレスやバイヤーを招き、コレクションを間近に見てもらうことで実際的なビジネスにつなげ、東京発のブランドをさらにバックアップしたいという狙いが感じられました。

今までにない形の発表の手法で面白かったのはニットブランド「KOTA GUSHIKEN」のヒカリエでのプレゼンテーション。自分自身もブランドのファンであるという芸人で芥川賞受賞作家の又吉直樹が、発表されたニットを一点一点、ユーモアを交えながら丁寧に紹介していくというもの。彼のキャラクターとブランドの持つ楽しさが見事にマッチし、会場からも大きな拍手を受けていました。「KOTA GUSHIKEN」はパリでの発表も考えているそうです。

KOTA GUSHIKEN 又吉直樹
「KOTA GUSHIKEN」の又吉直樹によるプレゼンテーション

昨季新人賞を取った「KANAKO SAKAI」は、日本の丁寧な職人の手仕事に支えられた素材や伝統的なモチーフを取り入れるなど、新たな試みの作品を見せました。新たな試みといえば、「SUPPORT SURFACE」の今季のテーマは“KAWAII !?-Adorable”。優雅なシルエットにフリルやドレープを伴ったスタイルはフェミニンな雰囲気を醸し出し、今まで苦手と言っていた「かわいい」を自分流の手法で提案しました。「HARUNOBUMURATA」は充分世界で通用するクオリティを別格の存在感で示してくれました。実験的なコレクションを展開し、昨年ブランド設立20周年を迎えた「アンリアレイジ」は「オム」を発表。その象徴ともいうべき手仕事にさらに注力し、迫力のあるコレクションを展開しました。ダッフルコートやスタジアムジャンパーにほどこされたパッチワークなど、異質な素材を組み合わせ、光や音も利用したコレクションは、入れ墨のようなプリミティブなメイクとともにある種の宗教性も感じさせました。

今回の「Rakuten Fashion Week TOKYO」では参加ブランドの数は前回と比較しても増えてはいません。しかしこれは事務局側でブランドをかなり厳選した結果といえるでしょう。以前はブランドにより技量やクオリティに差があり、見る側としても苦しいなと思うことがありました。参加することに意味があるのではないという、主催者側の意志の表れだと思います。

国立博物館内にある表慶館も何回かショー会場として使われました。海外ブランドでも「ジョルジオ・アルマーニ」がショー会場として使ったこともある、美しく重厚感のある建物です。ここではフィンランドのデザインハウス「Marimekko」のショーが、日本のファッションシーンをエンパワメントするプロジェクト「by R」の支援で開催されました。「Marimekko」はその独特の色使いやプリントで日本でもファンが多いブランドです。

地域により異なる顔を持つ東京だからできる「TOKYO CREATIVE SALON」

3月14日の夜は「TOKYO CREATIVE SALON」のオープニングが代々木第一体育館であり、「MIKIO SAKABE」のショーも開かれました。都内の10か所でクリエイションの発信が10日間行われ、各エリアで注目のブランドやクリエイターが登場しました。海外の大都市と比較しても面積も大きく、地域によって異なる顔を持つ東京。各エリアではそれぞれ独自の表現やファッションが起こっているのだと改めて感じました。

このような東京発のクリエイションを発信する機会が多くなっていくことは、これからの日本のあり方を考えると、「まだまだ希望があるぞ」という気持ちを抱かせてくれます。

2024年4月18日

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