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【田中杏奈の水引細工】水引に宿る日本古来の文化への眼差し

シンプルな結びの奥に広がる世界

2020年から始まったコロナ禍は、多くの人々が生き方や暮らし方を見つめ直す大きなきっかけとなったが、その時期に水引を習いたいという人の数が増えたと聞く。家で一人でできるという手軽さもあるが、それ以上に、写真や動画などで気軽に自己表現できる時代だからこそ、“紙のひもだけで心を伝える文化”に、多くの人が特別な意味を見いだしているのかもしれない。

「日本の伝統文化の代表である茶道、華道、香道などは習得にも時間がかかり、少しハードルが高いと感じる方も多いかもしれませんが、水引は伝統的な要素を多分に含みながら、誰もが気軽に始められるのが魅力のひとつだと思います。ちょっとした趣味として始められるのに、その先にはとても奥深い世界が広がっています」 。

言葉を使わずにそっと相手への気持ちを示す水引は、控えめで慎み深い美しさをたたえている。その美と精神性を損なうことなく、自然や伝統文化のエッセンスを織り込みながら、田中は水引を静謐(せいひつ)な造形として表現する。紙のひもで形づくられた多彩な作品を目にすると、そのアーティスティックな感性に目を奪われると同時に、古代より日本人が大切にしてきた、美しく生きようとする祈りにも似た思いが、ふと胸に響いてくる。

カラー、かすみ草、カモミールをあしらったブーケ。Photo by kozue hanada

◎「水引結び教室 晴れ」ではオンライン講座も開催中。
https://mosh.jp/services/162750

photos: Anna Tanaka text: Sauser Miho

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Profile

田中杏奈 Anna Tanaka


1989年兵庫県淡路島生まれ。大学卒業後は広告会社に就職。結婚・出産を機に水引と出会う。独学で学び作品を発表。2017年に水引ブランド「hare(ハレ)」を立ち上げ、現在は「水引結び教室 晴れ」も主宰。水引講師を務めるかたわら、企業の販促物や商品開発、企業広告・雑誌などのアートワークも手がける。著書に「暮らし・行事・ハレの日を結ぶ 水引レシピ」(2018 グラフィック社)、「水引で結ぶ二十四節気の飾り」(2019 日東書院本社)、「衣食住を彩る水引レシピ」(2021 グラフィック社)、「飾る・贈る・装う 花を結ぶ水引細工」(2024淡交社)。
https://www.mizuhikihare.com/

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