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対話型AIが注目を集める中、江戸時代の「いにしえ好き」が切り拓いた文化の豊饒に歴博とたば塩で驚く【what to do】

一畳敷原寸模型 原品:明治時代 国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館蔵

知的好奇心あふれる『マリ・クレール』フォロワーのためのインヴィテーション。それが”what to do”。今回は「好古趣味」について。「懐古趣味」ではない。「いにしえ」がとにかく好きな人たちの残した豊かな足跡を国立歴史民俗博物館とたばこと塩の博物館でたどる。ハードルは少し高いかも知れない。しかし、人混みで「思い出づくり」とやらに慌ただしい人たちを横目に、大型連休を優雅に過ごすための賢明な方法として、これらの企画展の展観をおすすめしたい。

手許の記録で確認すると2013年の10月から11月とあるから、結構前のことになる。早稲田大学演劇博物館(東京・西早稲田)で開かれていた「新耽奇会展-奇想天外コレクション」と題した企画展を観た。「新耽奇会」(昭和3~11年)は、江戸時代の曲亭馬琴らが珍品奇物を持寄って論評しあった「耽奇会」に倣って、昭和初期に開かれた「新耽奇会」を紹介。お岩さんの人形やらグニャグニャと曲がる「こんにゃく石」などが展示されていて、「奇」に「耽る」人たちの時代を超えたくだらなさに大いに感心した記憶がある。その時が江戸時代に奇妙な人が結構いたということを知るきっかけにもなった。

同展は無料で一般公開。図録は人気で売り切れてしまい、買い逃した

松浦武四郎の飽くなき好奇心に感嘆

「好古趣味」を知ったのは、同じ頃、当時は世田谷区岡本にあった静嘉堂文庫美術館で「幕末の北方探検家 松浦武四郎」展でのこと。松浦は「北海道」の名付け親として知られる探検家で、幕末から明治にかけて活躍し、古物のコレクターとしても知られていた。中でも、各地の有名な古社寺から集めた古材で作った「一畳敷」と呼ばれる一畳のスペースの書斎の原寸模型が展示してあって、その思いの強さに驚いたことがある。

静嘉堂文庫美術館も都心に移転して行きやすくなった

Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。還暦近くになって、自身の嗜好も「好古趣味」に偏りつつある。若手のクリエイターたちが「新しい」と言って見せてくれるモノも自分とっては大抵、既視感があるのだ。化繊のスーツに白いTシャツを決まったように合わせる彼らより、江戸時代の好事家に親近感を覚えるのは恐らく加齢故の退行だろうが、自分自身、まったく悪びれていないところに救いようがありやなしや。

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